寺島優(原作)/小谷憲一(漫画)『テニスボーイ』

テニスボーイ 1 (集英社文庫(コミック版))

テニスボーイ 1 (集英社文庫(コミック版))

連載:『週刊少年ジャンプ』(1979〜1982年)
単行本:集英社ジャンプ・コミックス 全14巻(1980〜1983年)
    集英社JCセレクション 全9巻(1989〜1990年)
    集英社コミック文庫 全9巻(2000〜2001年)


 テニスを主題材とした少年漫画としては初の長期連載作品。原作者の寺島優はこの後、藤原カムイの『雷火』、小泉裕洋の『競艇少女』、李志清の『三国志』など、多方面で原作者として活躍。一方、小谷憲一はこの後も寺島と組んで何本かWJで連載した後、青年漫画家に転向し、やがて『DESIRE』の作者として確固たる地位を築く。
 長野県の野球少年だった主人公・飛鷹翔が軽井沢でテニスの才能を見い出され、湘南のテニス選手養成学校・カリフォルニア学園中等部に編入し、やがて世界の強豪達と戦っていく、という物語。タイトルは「テニスボーイ」だが、実質的に人気を支えていたのは、飛鷹の周りを彩る女子選手達(岡崎涼子、高杉梨絵、ジュディー寺尾、etc.)であり、その意味では作者は既にこの頃から美少女漫画家としての片鱗を見せていたと言えよう。
 本作品の最大の特徴は、シングルスと同等以上に混合ダブルスが物語の中核を占めている点である。というのも、実は飛鷹はシングルスでは重要な局面で幾度も負けており、その一方で混合ダブルスでは無類の強さを発揮する。これも、作中の女性選手達の人気を反映した展開と言えよう。
 テニス描写としては、『アストロ球団』に始まるジャンプ本流の魔球漫画の系譜に属し、ウルトラ・ループ・スウィング、ピーコック・ダイヤモンド、クインビー・ダイナマイトなどのトンデモ技が次々と登場する。特に、ツイン・ビームとシラシ・アサーナは、おそらく『キャプテン翼』における超有名合体必殺技×2の元ネタであり、その意味でも、ジャンプの魔球漫画の伝統を語る上では欠かせない作品と言えよう(そして、現在もその系譜は別のテニス漫画によって受け継がれている)。
 物語のハイライトは中盤のハワイアン・マッチ編であり、その後(特に最終盤)はやや迷走した感が否めないが、全体的にテンポ良くサクサクと読める作品なので、本屋で見かけたら気楽に手に取ってみることをお勧めする。