ちばてつや『少年よラケットを抱け』

少年よラケットを抱け (1) (講談社漫画文庫)

少年よラケットを抱け (1) (講談社漫画文庫)

連載:『週刊少年マガジン』(1992〜1994年)
単行本:講談社少年マガジンコミックス 全12巻(1992〜1994年)
    ホ−ム社ちばてつや全集 全8巻(1998年)
    講談社漫画文庫 全6巻(2002年)


 『ちかいの魔球』『あしたのジョー』『あした天気になあれ』などで有名なスポーツ漫画界の大御所・ちばてつやが描いたテニス漫画。作者にとっては、本作品が最後に週マガで連載した作品となる(2006年現在)。ちなみに、日本テニス協会や、高校テニスの名門・柳川高校庭球部が「特別協力」としてクレジットされている。
 ボクシング部に入部するために九州の双葉学園高校に転向してきた主人公・古賀大志が、ボクシング部が休部状態にあることを知り、代わりに弱小男子テニス部を乗っ取ってボクシング部を再建しようと試みる、という物語。当初はテニスを馬鹿にしていた古賀が、徐々にテニスの世界へと取り込まれていき、破天荒な戦法で県大会を勝ち上がっていく、というのが本筋であり、ちばてつやならではの男臭く豪快なストーリーが魅力である。
 本作品の特徴は、ひたすら試合描写が細かい点にある。試合形式が1セットマッチであるにも関わらず、一試合で2〜3巻費やすこともあり、本物のテニスさながらの緊張感を味わいながら読み進むことになる。この点は、さすがにスポーツ漫画の第一人者としての作者の面目躍如と言えよう。
 ただ、そのせいもあって全12巻の割にはあまり物語が進まないまま、中途半端な形で最終回を迎えて(打ち切られて?)しまっており、全体的な評価としては、(ちば作品の割には)正直言って微妙と言わざるをえない(むしろ、序盤の緩慢な展開を考えれば、ちばてつやだったからこそ、なんとか12巻まで打ち切られずに済んだ、と言うべきかもしれない)。
 とはいえ、「土蜘蛛」を初めとする数々の奇策や、最終戦での「邪道対決」など、他のテニス漫画には見られない独特の面白さがあることもまた事実なので(そういえば、インドア・テニスがメインの漫画というのも、本作品だけかもしれない)、あまり一般ウケはしないとは思うが、重厚かつ破天荒なスポーツ漫画が読みたい人には、自信を持ってお勧め出来る作品である。