北斗たかし(原作)/本山一城(漫画)『ビッグショット』

連載:『週刊少年マガジン』(1980年)
単行本:講談社コミックス(1980〜1981年) 全4巻


 近年は歴史コミックなどを執筆している本山一城の初の長期連載作品。本山一城はその後、ボンボンのスーパーマリオ関連コミックなどでも活躍するが、北斗たかしの方は本作品以外ではその名すら発見出来ない(写真を見る限りは女性のようだが、もしかしたら本作品のみの限定PNだったのかもしれない)。
 中学三年生の主人公・草薙草(くさなぎ・そう)が、日本テニス協会が新たに創始したテニス選手養成のための特待生制度「黄金のラケット計画」の一期生の座を目指して、ライバル達との競争を戦い抜いていく、という物語。
 前年の週マガの『純のスマッシュ』とは対照的に、本作品は徹頭徹尾「魔球」の魅力を全面に押し出した内容である。トーナメントを勝ち進むごとに現れるライバル達が、それぞれに独自の魔球や必殺技を駆使して草の前に立ちはだかり、草もまたそれを様々な秘策や更なる魔球をもって打ち破っていく、という展開は、むしろ同時代の『テニスボーイ』に近い(魔球の出現率としては、本作品の方が上かもしれない)。
 中でも最大のライバルとなるのが、この企画者の息子であり、全仏オープン・ジュニアで優勝した錦木至(にしきぎ・いたる)である。彼の初期の必殺技である「死界球」は、後の『LOVe』『GUT's』『テニスの王子様』などの魔球漫画でも(それぞれ異なる名前で)用いられることになる典型的な魔球の一つであり、他にも後のテニス漫画に影響を与えた(かもしれない)多種多様な魔球が物語を盛り上げる。
 しかし、残念ながら人気はあまり芳しくなかったようで、『純のスマッシュ』同様、わずか四巻で終了しており(総頁数としては、本作品の方が微妙に短い)、現在でもその存在を知る者は少ない。しかし、短いながらもその中身は非常に凝縮された濃密な内容であり、歴代の週マガのテニス漫画の中ではかなり上位に位置付けられるレベルの完成度なのではないかと思う。単行本自体が非常にレアなので、入手はかなり困難ではあるが、魔球漫画の源流の一つとして、テニス漫画史を語る上では外すことの出来ない作品である。