斉藤倫『すっとんきょーな兄妹』

すっとんきょーな兄弟 1 (マーガレットコミックス)

すっとんきょーな兄弟 1 (マーガレットコミックス)

連載:『別冊マーガレット』(1991〜1992年)
単行本:集英社マーガレットコミックス(1991〜1992年) 全3巻
    集英社文庫コミック版(2004年) 全2巻


 『タマネギなんかこわくない!』や『世界はみんなボクの為』など、主に『別冊マーガレット』を中心に多くの作品を発表した斉藤倫の代表作の一つ。現在は『デラックス・マーガレット』にて『世界を敵に回しても』を連載中。
 本作品の主人公は「上田家」の三兄妹。長男で優等生の徹(高三)と、次男で不良肌の薫(高二)は共にテニス部のエースで、ダブルスでは全国区の実力の持ち主なのだが、末っ子の有希(あき/高一)だけは全くの運動音痴。読者の視点となる実質的な主人公は有希であり、彼女は徹にはブラコン気味の感情を抱く一方で、薫とは顔を合わせる度に喧嘩ばかりだったのだが、両親の交通事故を契機に「上田家の秘密」が明かされることで、微妙に三人の人間関係が変化していく、という物語。
 「みそっかすの末っ子」という主人公はテニス漫画には多いが(『スマッシュ!メグ』『太陽にスマッシュ!』『SEASON』『春美120%』etc.)、本作品の特徴は、有希が最後までテニスの才能に目覚めることなく終わっている点である。その意味で、テニス漫画としての本作品の「主役」は実は薫なのだが、実際のところ作品全体を通してのテニス描写自体がさほど濃密ではなく、むしろ彼等三人の人間関係の推移の方に重点を置いて描かれている(その意味では『DOUBLES』にも近い)。
 徹と薫は、それぞれがマイルド系とワイルド系の王子様であり、その構図はまさに少女漫画の王道である。全体的にも「お約束」的展開が多く、分かりやすい物語なのだが、基本的に三人の間だけで話が完結してしまっているため、他のキャラ達の見せ場が少なく、ややあっさりしすぎているようにも思える。一応、例外として松岡親子はいるのだが、個人的にはもう1〜2人、物語に本格的に絡む人材が欲しかった。
 絵柄的には少女漫画とレディコミの中間的な画風であり、作品全体の雰囲気も同様の位置付けだと思って問題ない。現在は文庫版も発売されているので、おそらく容易に入手することが出来るであろう。