小谷憲一「素敵なエイリアン」(『小谷憲一短編集1 ショッキングMOMOKO』収録)

小谷憲一短編集 (ジャンプコミックス)

小谷憲一短編集 (ジャンプコミックス)

初出:『フレッシュジャンプ』(1987年)
単行本:集英社ジャンプコミックス小谷憲一短編集1 ショッキングMOMOKO』(1991年)


 『テニスボーイ』および『Doubles』の作者である小谷憲一が、今は亡き『月刊フレッシュジャンプ』に掲載した作品。その後、ジャンプコミックスの『小谷憲一短編集1 ショッキングMOMOKO』に掲載された。
 主人公は、中学二年生のテニス選手・生島勇気。テニスの大会に出場するため、同じテニスクラブでダブルス・ペアを組む親友・岩本純と共に軽井沢を訪れるところから物語は始まり、やがてそこで不思議な少女・永里杏と出会うことになる。当初は、UFOと共に現れた彼女の正体を突き止めようとする二人であったが、途中から彼女を巡って引き起こされる様々なトラブルへと巻き込まれていく。
 短編作品なので、あまり詳しく話すとネタバレになってしまうのだが、正直言って、良くも悪くもかなり「いい加減な作品」であり、途中で「おいおい、それで納得しちゃうのかよ」とツッコミを入れたくなる場面や、最終的に「結局、アレはなんだったの?」と小首を傾げたくなるような部分もある。しかし、おそらく本作品にとってそれは「どうでもいいこと」であり、本作品の存在価値は、ヒロインである杏の魅力のみ、と言っても過言ではなかろう(まぁ、それでこそ小谷憲一、なのだが)。
 テニス描写も僅かながらに存在し、勇気は守備型、純は攻撃型の選手、といった設定もあったのだが、殆ど生かされないまま試合は終わってしまう。ただ、その後のクライマックスの場面において、彼等の「テニス選手」としての技術を生かしたアクションシーンが展開されることになる。その意味では、ギリギリ「テニス漫画」と言えないこともない(かなり苦しいが)。
 上記の通り、あくまでもヒロインへのキャラ萌えだけのためにあるような作品なので、その手の作品の興味がない人、およびこの人の描く女性キャラに魅力を感じない人にはお勧め出来ない。そのことを踏まえた上で、試しに読んでみたい人がいれば、ブックオフなどを気長に回ってみるのが良かろう。