YAMBOW(原作)/谷口亜夢(漫画)『Final』

Final 1 (講談社コミックスフレンド)

Final 1 (講談社コミックスフレンド)

連載:『週刊少女フレンド』(1987年)
単行本:講談社KCフレンド(1987年) 全1巻


 1980年代から1990年代にかけてフレンド系雑誌で活躍した谷口亜夢(あむ)の描いたテニス漫画。作者は本作品の他にも単発の単行本を何冊も講談社から出版した後、現在は竹書房に移り、『雀鬼サマへの道』『実践 進め!無敗への道』などの麻雀漫画を執筆している。ちなみに、原作のYAMBOWという人物に関しては一切不明。誰か何か知ってる人は情報求む。
 主人公は、高校一年生の神宮ヒロ(♀)。日本のテニス部の「上級生優先の伝統」に嫌気が差し、一度はテニスを捨てた彼女が、兄を追って訪れたL.A.で、天才テニス少年ジミー・デイロと出会うところから物語は始まる。生粋のアメリカ人であるジミーのノリに当初は戸惑うヒロであったが、やがて彼の魅力に惹かれていき、彼に感化される形で、徐々にテニスに対する情熱も取り戻していくことになる。
 全編通じて、ヒロの「ジミーへの想い」と「テニスへの想い」が交差しながら発展していく様子が描かれており、「青春テニス漫画」としては王道の作品と言えよう。また、物語の節々に「日本型の部活動」に対して批判的な作者の姿勢も垣間見れて興味深い。
 ただ、基本的にヒロ一人の視点で物語が展開されるため、周囲のキャラ達の心情描写がやや淡白に思えるのもまた事実である。特に、肝心のジミーの描き方があまりにも飄々としすぎていて、彼の彼女に対する感情が今一つ描ききれていないように思えてしまう。
 テニス描写に関しても、単行本内に初心者向けの「テニス講座」を掲載するなど、作者のテニスに対する強い想いは伝わってくるのだが、肝心の本編における描写が薄い感は否めない(まぁ、伝統的にテニス漫画が弱いフレンドにおいては、これ以上の試合描写は望まれなかったのかもしれないが)。
 総評としては、全編通して悪くはないのだが、「もう少し余裕を持って描けば、もっと面白くなったかもしれないのに」という気にもさせられる、そんな作品である。せめてサブキャラ達がもう少し話に絡めば、より深みのある物語になったと思うのだが、短期連載という枠(?)の中ではこの辺りが限界だったのかもしれない。