坂口いく『100%』

坂口いく短編集 2 (ジャンプコミックス)

坂口いく短編集 2 (ジャンプコミックス)

初出:下記単行本
単行本:集英社ジャンプコミックス(1991年) 全1巻


 『闇狩人』や『きりんBREAK A ROAD』などで有名な坂口いくが、ジャンプコミックスから発売された『坂口いく短編集2』の表題作として描き下ろした短編作品。同単行本には他に、「元祖うるとら愛(1&2)」「サイコトラブル」「よくある話もふたりにとって」(デビュー作)を収録。近年の作者は岩澤紫麗とのコンビで『チェンジ123』を『チャンピオンRED』にて連載中。
 主人公は、ごく一般的な普通の高校生・唯野高志。「理想の70%くらいの彼女ができればいい」とささやかに思っていた彼が、駅のホームで「自分にとっての100%」と呼ぶべき理想的な少女を発見するところから、物語は始まる。一週間後、彼女がテニスのインターハイ優勝者であるということを知った彼は、テニス部に入ってインターハイ出場を目指すことになる。
 このように書くと、正統派の青春テニス漫画のような物語のように見えるが、実は30頁程度の短編である本作品の中で、この「テニス編」はほんの一瞬で終わってしまう「つかみ」のエピソードにすぎない。その後の展開、そして彼女の正体については、ネタバレになるので割愛する。ただ、ひたすらハイテンポな物語であり、正直、ついていけない人はついていけないだろう。作者自身も「この作品は読んでもらって、つまらないと言われれば、それまでの変なマンガです」と開き直ったコメントをしている(ただし、描いた本人としてはお気に入りらしい)。
 正直、私としても評価に困る内容ではあるのだが、本作品のよく分からない不思議な読後感は嫌いではない。テニス漫画評論家としては、もう少し最初のテニスのエピソードを、せめてあと数頁描いて欲しかった気もするが、むしろ、作者としてはひたすら勢いで一気に読み終えさせたかったのであろうし、それはそれで成功しているので、これくらいで丁度良いのかな。マサチューセッツ工科大学の表記が間違ってるのも、まぁ、御愛嬌ということで(あるいは、わざとか?)。