一ノ木アヤ（原作）／青池保子（漫画）『ラケットに約束！』
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単行本：講談社コミックス（1970年） 全2巻
少女漫画史上屈指の長期連載作品『エロイカより愛を込めて』の作者・青池保子の初期の連載作品であり、『スマッシュをきめろ！』と並ぶ日本の本格テニス漫画の元祖と呼ぶべき存在。原作者の一ノ木アヤは、他に萩尾望都の『ケーキケーキケーキ』や大和和紀の『先生にタッチ』などでも原作を担当している。
主人公は、青城学院高校テニス部の一年生・風見若子（通称：ラビット）。一年生ながらサウスポーで瞬発力に優れ、同部ホープとして期待されている彼女が、宿敵・陽北高校のコーチを勤める三年生の神剛（じん・たけし）と出会うところから物語は始まり、そして彼によって鍛えられた陽北高校のエース・小川亜紀との激しいライバル対決が、本編全体を通じて展開される。
冒頭の左打ちツイストサーブを初めとして、フラッシュボレーや超ハイジャンプスマッシュなど、後のテニス漫画にも通じる様々な魔球が登場する一方で、母や先輩との確執など、当時のスポ根全盛期ならではの人間ドラマも組み込まれている。
しかし、やはり本作品の最大の魅力は若子・亜紀・神の三角関係である。中盤以降は実質的に亜紀も若子と同格の「もう一人の主人公」として描かれ、それぞれに新技を開発しつつ、選手として、女性として、そして人間として、互いに切磋琢磨していく様子が描かれていく。
本作品の単行本は未だに復刻されておらず、現在入手は非常に困難な状況である。内容的には、決して『スマッシュをきめろ！』や『太陽にダッシュ！』に劣っているとは思えず、作者の知名度・人気も高いにも関わらず再版されないということは、青池保子にとってこの作品は（現在の彼女の作風とは全く異なるが故に）「あまり振り返りたくない過去」なのかもしれない（少なくとも『ケーキケーキケーキ』は文庫化されてるので、原作者側だけの事情とは考えにくい）。
しかし、このまま「幻の作品」として埋もれさせてしまうにはあまりに惜しい、テニス漫画史を語る上で決して外すことが出来ない名作であることは、決死の覚悟でヤフオクで35500円払って購入＆熟読したこの私が保障する。
