松島裕子「食べちゃうぞ!マロンちゃん」(『グリーンノートらぶれたあ』収録)

連載:『なかよし』(1977年)
単行本:講談社なかよしKC『グリーンノートらぶれたあ』(1979年) 全1巻


 1970年代後半〜1980年代前半にかけて『なかよし』で活躍した松島裕子の短編作品。単行本としては『グリーンノートらぶれたあ』に収録(同単行本には他に「真夜中のティータイム」「あなたの魔法にかかったの!」「ショパンはやさしすぎて」を収録)。作者は他に、『ちひろの童話図書館』『おしゃべりなバニラエッセンス』『ブラボー ベースボール』などの単行本作品を残している。
 主人公は、二本松中学校の女子学生・青木りんご。本来は三年生の年齢でありながら、病気休学により、もう一度二年生をやり直すことになった彼女が、幼馴染みの栗田まもるに付き添われて登校するところから物語は始まる。まもるは、昔は泣き虫でりんごに守られる立場であったのだが、彼女が入院している間に生徒会長&番長となり、全校の女子生徒から「マロン様」と呼ばれるアイドル的存在になっていた。りんごはそんな状況の変化に戸惑いつつ、テニス部への入部を希望するものの、まもるの親衛隊と化しているテニス部員達は、まもるに終始付き添われるりんごのことを疎ましく思っていたため、彼女を巡って大きなトラブルが引き起こされることになる。
 主人公の相手役が「生徒会長」兼「番長」という設定が、いかにも70年代風の香りを醸し出していると言えよう。また、全体的に色々と無理のある展開が多い気はするが、それはそれでこの時代の空気を味わうための要素としては楽しめる。テニスに関しては、実はラケットすら1コマしか登場しない程度の描写であり、「テニス部」という設定すら、別に他の何部であっても問題ないような扱いなので、テニス漫画としての何かをこの作品に求めることは出来ない。
 個人的には、この人ような「やわらかな絵柄」は大好きなのだが、最近はこういうタッチの少女漫画家はいないよなぁ、とつくづく思わされる。今、この人がどこで何をしているのかは知らないが、この短編が、この当時だからこそ描くことが出来た貴重な雰囲気の作品であることは間違いない。