手塚治虫『三つ目がとおる』

三つ目がとおる(7) (講談社漫画文庫)

三つ目がとおる(7) (講談社漫画文庫)

連載:『週刊少年マガジン』(1974〜1978年)
単行本:講談社コミックス(1975〜1977年) 全6巻
    講談社手塚治虫漫画全集 全13巻(1977〜1981年)
    講談社コミックススペシャル 全8巻(1986〜1987年)
    講談社コミックスグランドコレクション 全8巻(1996年)
    講談社漫画文庫 全8巻(1999年)+秘蔵短編集(2008年)
    講談社コミックススーパーベスト 全3巻(2000年)
    講談社プラチナコミック 全14巻(2003年)


 戦後日本漫画界の最高神手塚治虫週刊少年マガジンで描いた伝奇SF漫画。今回取り上げるのは雑誌連載版の最終回「スマッシュでさよなら」であり、単行本としては、手塚治虫漫画全集版の第13巻、KCスペシャル版・KCグランドセレクション版・講談社漫画文庫版の第7巻、そしてプラチナコミックス版の第14巻に収録されている(最初のKC版とスーパーベスト版には未収録)。
 主人公は、古代の人類「三つ目族」の末裔である中学二年生の写楽保介(しゃらく・ほうすけ)。日頃は幼稚な言動を繰り返し、頻繁にいじめの対象となっている彼が、絆創膏で隠されている「第三の目」を露にすることで別人格となり、秘めた力を発揮して様々な事件や謎を解決していく、という物語。そんな彼の唯一の理解者が、天才的な運動能力を持つ少女・和登千代子(わと・ちよこ)なのだが、雑誌連載版の最終回においては、彼女が高校生の男子テニス部の部長に恋心を抱く、というエピソードが描かれる。
 このエピソード、実はプラチナコミックス版以外の単行本では掲載順序において「最終回」扱いではなく、そのせいもあってか、単行本版では大きく内容が改変され、あくまで一つの短編回として読めるように修正されている(詳細はngt Japanの「リサーチ」→「三つ目がとおる」を参照)。もともと、神はこの作品の続編を描く構想を考えていたようで、それ故にあえて「最終回らしくない最終回」を描いたらしいのだが、結局、その構想が実現することはなかった。
 正直、この回の内容自体は非常に微妙で、シリーズ全体の中でも決して上位に位置付けられるような完成度ではないのだが、一説にはスポーツ漫画を嫌っていたとも言われる神の作品における数少ないテニス選手達が登場するエピソードとして、あえて紹介させて頂いた次第である。