丘けい子『愛と死の青春』

愛と死の青春 (1979年) (ティーン・コミックス・デラックス)

愛と死の青春 (1979年) (ティーン・コミックス・デラックス)

連載:『週刊マーガレット』(1971年)
単行本:若木ティーンズコミックス(1976年) 全1巻


 『カリブの女海賊』、『紅バラの伝説』、『挑戦』などで有名な丘けい子が、マーガレットに描いた作品。単行本は若木書房から発行され、「初恋・涙・しあわせさん」が同時収録されている。この単行本は現在絶版だが、内容は「丘けい子の世界」の「書庫」にて無料で閲覧することが出来る(ちなみにこのサイトの情報によると、作者と『うわさの姫子』の藤原栄子は従姉妹らしい)。
 本作品においては、まず18才の主人公・神崎笑子(えみこ/通称:おゲラ)が、かつて恋人として同じ時を過ごした村雨達也の遺骨を焼いた灰を抱きながら、浜辺で一人悲しむ場面を冒頭に描いた上で、その後は彼が死に至るまでの過去三年間(中学三年〜高校三年)の物語が描かれていく。
 当初、笑子と達也は同じ飯田中学のテニス部に所属する部活仲間であり、達也は県大会で優勝、笑子も準優勝という実績の持ち主なのだが、残念ながら本編は彼が発病した後の物語なので、その実力が発揮される場面は少ない。ただ、笑子と達也の他にも、中学時代のテニス部には晴子(通称:晴ベエ)や国彦、そして進学先の高校でも笑子の中学時代のライバルである一条(宮中出身/県大会優勝者)など、男女様々なテニス部員が登場しており、その意味では「テニス部漫画」的な要素はそれなりに盛り込まれていると言える。
 物語の本筋は、(タイトルにもある通り)まさに青春時代の「愛」と「死」であり、その展開は非常に重い。特に、最初に「達也の死」という結末を描いた上で、そこに至るまでの、達也の身体が動かなくなっていく過程、そしてその残酷な運命に慟哭する人々の描写(特に、達也自身のモノローグ)は読者の心に激しく響く。
 全体的に、「いかにも70年代」といった雰囲気が強く、色々な意味で、今日の少女漫画雑誌では読むことの出来ない内容であることは間違いない。上記の通り、現在はネット上で全編公開されているので、悲恋モノが好きな人々にはぜひ御一読をお勧めしたい。