高橋留美子『めぞん一刻』

めぞん一刻 (7) (小学館文庫)

めぞん一刻 (7) (小学館文庫)

連載:『ビッグコミックスピリッツ』(1980〜1987年)
単行本:小学館ビッグコミックス(1982〜1987年) 全15巻
    小学館ビッグコミックス・ワイド版(1992〜1993) 全10巻
    小学館文庫(1997年) 全10巻
    小学館My First WIDE(2002年) 全6巻
    小学館ビッグコミックコンパクト(2005年) 全16巻 


 『うる星やつら』『らんま1/2』『犬夜叉』などで知られる、日本を代表する女流少年漫画家高橋留美子の代表作の一つ。1986年にはアニメ化、同年には実写劇場化(主演・石原真理子)、そして2007〜2008年にはTVドラマ化も果たした(主演・伊東美咲)。本作品の終了後、作者は同じ小学館の青年誌で『高橋留美子劇場』(ビッグコミックオリジナル)と『1ポンドの福音』(ヤングサンデー)を長期にわたって不定期連載することになる。
 オンボロ・アパート「一刻館」に住む浪人生・五代裕作と、管理人として赴任してきた若き未亡人・音無響子の二人を軸とした恋愛劇を中心に、一刻館の住人達が巻き起こす様々な非常識な日常が描かれていく。響子は高校時代からテニス部に所属しており、一号室の住人・一の瀬花枝と共にテニススクールに通っている。そして、そのスクールのコーチ・三鷹瞬もまた、この物語に大きく関わる人物となる。
 おそらく本レビュー史上最も有名な作品なので、物語の本筋についての解説は必要あるまい。その上で、テニス漫画としての本作品に目を向けると、テニススクールにおける響子と三鷹の姿は頻繁に描かれているのだが、その割に実際にプレイしている場面は少なく、「テニス」そのものが物語に深く絡むこともほぼ皆無である。あくまでも、「理想の色男」としての三鷹を演出するための記号と、響子のテニスウェア姿を見せるための設定であると考えて良かろう。
 なお、物語の途中から、某有名テニス選手の名を持つ牡犬が登場する訳だが、彼がこの恋物語を決着させる上で、非常に重要な役割を果たすことになる。「悪童」と言われた彼の名が、そのような役回りの犬に与えられている点にニヤニヤさせられたテニスファンも、決して少なくはないだろう。