滝直毅(原作)/双葉たかし(作画)『ぶるどっぐ』

連載:『フレッシュジャンプ』(1987〜1988年)
単行本:集英社創美社)ジャンプスーパーコミックス(1988年) 全2巻


 『どっかん』(作画:能田茂)、『ひまわり』(作画:林荘太)、『硬派埼玉レグルス』(作画:山本コーシロー)の原作者・滝直毅(たき・なおたか)が、双葉たかしと組んで発表したテニス漫画。単行本の2巻の後半は、双葉のデビュー作である「ヒミコ・シンドローム」も掲載。近年の滝は土田世紀と共に描いた『ギラギラ』がドラマ化を達成したが、双葉のその後の活動は不明。
 主人公は、難病を背負った幼い妹の手術代を稼ぐために賭けテニスをしている少年・佐藤若馬(しぐま)。彼が、名門・城北大テニス部の夏合宿に現れ、部員達に勝負を挑むところから物語は始まる。そして、大学選手権四連覇中の立花健吾の臨時コーチとして合宿所を訪れていた伝説の選手・深持俊作は、若馬の荒削りなプレイの中に、世界と戦うために必要な「ブルドッグのような闘争心」を見出し、彼を世界一の選手へと鍛え上げることを決意することになる。
 上記の設定からは、明らかに『テニスボーイ』と『燃えるV』の影響が強く感じられるが、以後の展開においても、ハイテク機器を活用してトンデモ技を研究したり、相手を試合続行不可能に追い込むことで勝利をもぎ取るなど、まさに両作品の魅力を絶妙のバランスで取り入れた、正統派の格闘テニス漫画に仕上がっている。
 特に異彩を放っているのは、最終話で登場するテニス界の帝王リヒャルダーの姪・ミリアである。全英Jr.チャンピオンであると同時に天才フィギュアスケーターでもある彼女の特殊能力は、歴代のテニス漫画と並べても遜色ないほどの独創的なトンデモ理論に基づいており、実に興味深い。
 絵的には、デッサンは粗いがスポーツ漫画としてのツボを押さえた柔らかな画風であり、80年代後半のテニス漫画の中ではかなり上位の完成度だと思うのだが、残念ながら全6話で打ち切られてしまったため、知名度は極めて低い。ミリアをもっと早く出しておけば、もう少し延命出来たのでは? とも思うのだが……、やっぱり「時代」に合わなかったのかな。