棟居仁(原作)/滝井寿紀(漫画)『Because...』

Because… 2 (ジャンプコミックス)

Because… 2 (ジャンプコミックス)

連載:『月刊少年ジャンプ』(1993年〜1995年)
単行本:集英社ジャンプコミックス 全5巻(1993年〜1995年)


 『月刊少年ジャンプ』で連載された青春恋愛オムニバス作品集。作者は、『マッドコマンダー』(画:小成たか紀)や『ハードボイルド・ダディ』(画:石原浩平)などの原作者である棟居仁(むねすえ・じん)と、『トップスピード』や『火消し夜弁慶』(原作:狩野梓)などの滝井寿紀。単行本は全5巻にわたって発売されているが、本レビューではそのうち、テニス部内の恋愛劇を描いた第2巻収録の「思い出の夏II」と、第4巻収録の「キャプテンの恋」について取り扱う。
 「思い出の夏II」は、テニス部の四泊五日の夏合宿のために避暑地を訪れた高校一年の長沢勇一が、同学年の森村陽子(純真系)と伊藤宏子(セクシー系)の二人の間で気持ち尾が揺れ動く物語。「キャプテンの恋」は、テニス部の海合宿において、高校2年でキャプテンの生田健人(通称:ケント)が、後輩の星野尚子に迫られる様子を見て、副キャプテンの平山葵が心を乱される、という物語。
 作品自体のコンセプトは、明らかにマガジンの『BOYS BE...』を意識した内容であり、そのことはタイトルからも読み取れる。ただ、二番(三番?)煎じとはいえ、内容自体は悪くない。月ジャンにしては珍しくエロ要素が控え目で、純粋に物語で勝負している辺りは、幅広い層に好感を持たれるだろう。
 上記の物語二つは、どちらもテニス部内での三角関係を描いた物語であり、まぁ、結論はほぼ最初から予想出来る内容なのだが、そこに至るまでの話の組み立て方は上手いと思う。どちらもヒロインが魅力的である上に(どちらかというと、私は森村の方が好み)、主人公が性格的に(少なくとも私には)好印象な人物で感情移入がしやすいというのも、恋愛漫画としては好ポイントだと思う。
 ただ、時代性の問題もあるとはいえ、やはり絵が地味だったのが難点なのか、現在でもあまり評価は高くなく、知名度も低い。やっぱり、月刊少年誌で描くには、もう少し露出が必要だったのかな(一応、入浴シーンくらいはあるんだけどね)。あと、カラー表紙があまり上手くないのも、単行本が売れなかった要因としては大きいのかも。