池田多恵子『らびっとスピリッツ』

らびっとスピリッツ 2 (フラワーコミックス)

らびっとスピリッツ 2 (フラワーコミックス)

連載:『ちゃお』(1991-1992年)
単行本:小学館フラワーコミックス(1992-1993年) 全3巻


 『とんでぶーりん』のコミック版などで有名な池田多恵子の最初の連載作品。二部構成で『ちゃお』にて連載され、単行本は全三巻にまとめられた(各巻の巻末には初期の作者の読切作品が同時収録されている)。近年の作者は『きらりん☆レボリューション』(中原杏)や『極上!!めちゃモテ委員長』(にしむらともこ)の学年誌版を担当している。
 主人公は、中学三年生の観月うさぎ。小柄ながら、人間離れした跳躍力と天才的な運動神経の持ち主である彼女が、白ウサギのうー太と共にS区立南台中学校に転入するところから物語は始まる。第一部では、彼女が同中学のバスケ部で活躍する物語が描かれ、第二部では光栄学園高校に進学した彼女が、剣道とテニスに挑戦する物語が展開される。
 小柄な少女が様々なスポーツに挑戦する漫画としては、『オッス!美里ちゃん』や『いるかちゃんヨロシク!』が有名だが、主人公の名前のセンスなどからも分かる通り(ちなみに、講談社の某うさぎより本作品の方が三ヶ月早い)、どちらかといえば後者に近い、破天荒なトンデモスポーツ系の物語である。ただ、『いるかちゃん』がスポーツ漫画であると同時に青春恋愛漫画としても楽しめる作風であったのに対し、本作品はよりスポーツ&コメディ方面に特化した内容と言える。
 テニス編の描写に関しては、かなり滅茶苦茶な展開ではあるが、テニスの基本をしっかりと学んだ上での演出であることは明らかであり、試合のテンポも小気味良い。また、ライバル校の選手が『テニスボーイ』の森兄妹の必殺技とそっくりなコンビ技を駆使してくるのだが、テニスという競技の中での使い方としては、むしろ本作品の方が説得力のある使用法だと私は思う。
 全体的に、スポーツ少女漫画としては十分に楽しめる内容なのだが、出来ればもう少し恋愛描写も欲しかった、というのが正直な感想。各巻末に収録されている短編作品を読む限り、作者は恋愛描写も結構上手い人なので、その力量が生かせていないのが、ちょっと残念なところ。でもまぁ、うさぎの性格を考えれば、最後の番外編くらいの描写の方が適切なのかもしれない。