山口博史『ビバ!蘭太郎』

ビバ!蘭太郎(1) (月刊少年マガジンKC)

ビバ!蘭太郎(1) (月刊少年マガジンKC)

連載:『月刊少年マガジン』(1980〜1981年)
単行本:講談社マガジンKC(1981年) 全1巻


 『おれのサーキット』などで有名な山口博史が『月刊少年マガジン』にて描いた作品。単行本には「第1巻」と表記されているが、第2巻が発売された形跡は無い。故に単行本未収録話がある可能性はあるが、その存在が確認出来なかったため、単行本収録話のみを対象としてレビューする。作者はその後、「飛鳥弓樹」に改名し、秋田書店などで活躍した後、成年漫画家へと転身。最新の単行本は『淫唇山脈』。
 主人公は、愛羅布(あいらぶ)高校2年A組の伊藤蘭太郎。生真面目な優等生的性格の彼であるが、実は学ランの下に体力強化ギプスを装着して生活するほどの超人的な身体能力の持ち主で、ラグビー、柔道、サッカー、バスケ、野球など、様々な部活に助っ人として参加している。そんな彼が、第5話では、NHK番組の企画で愛羅布高校に臨時コーチとして赴任してきたビヨン・ボルグと対戦する、という物語が描かれる。
 いわゆるマルチスポーツ漫画だが、『硬派銀次郎』や『火の玉ボーイ』のような青春熱血系よりも、むしろ『うわさの姫子』のようなドタバタ・コメディ系の作風であり、蘭太郎の超人能力と天然ボケに周囲が振り回されるというのが、物語の主軸である。また、主人公がボルグと対戦する展開は『ファイアーショット』と似ているが、あくまで基本はギャグなので、内容のトンデモ度合は本作品の方が強い。ただ、シンプルな画風ながらもテニスのフォームなどはそれなりに研究して描いているようで、その点は好感が持てる。
 そして、蘭太郎の周囲の面々も、60年代を溺愛する辺土理屈(へんど・りくつ)先生を初めとする、ハイテンションでキャラの濃いメンバーが揃っているのだが、中でも個人的にお気に入りなのが、第7話から登場するスケバンの美狂(みき)である。セーラーカラーのチャイナドレスという奇抜なファッションを身にまとい、蘭太郎のライバルとして登場しながらも、なんだかんだでツッコミ役として物語にとけ込んでいく過程が面白い。
 まぁ、内容を一言でまとめると「無茶苦茶な漫画」なのだが、今読んでもついクスリと笑ってしまう、妙なツボを刺激される作品でもある。とはいえ、それは私のような古い感性の人間だけなのかもしれないけどね。