清水沢まこと「学校菜園おけらば」

学校菜園おけらば(1) (KCデラックス)

学校菜園おけらば(1) (KCデラックス)

初出:『マガジン・グレート』(2007〜2009年)
単行本:講談社コミックス 全3巻(2008〜2010年)


 かつて「清水沢亮」の名で活動していた作者が「清水沢まこと」への改名後に『マガジン・グレート』で描いた作品。作者の他の代表作としては、「亮」時代に師匠の佐佐木勝彦と共に大槻ケンヂの自伝的小説を漫画化した『グミ・チョコレート・パイン』など。
 主人公は、高校一年生の森永日和。東京育ちだった彼女が、父親の仕事の転勤で田舎の高校に転校してくるところから物語は始まる。都会育ちの彼女は、田舎で感じる新鮮な空気を楽みつつ、東京時代に所属していたテニス部に入ろうとするが、球拾いばかりの日々に退屈してすぐに退部してしまう。その後、様々な刺激を求めて様々な部活を転々とした結果、麦わら帽子をかぶった怪しげな風貌の部長に乗せられて、なりゆきで園芸部(通称:おけら部)に入部することになる、という物語。
 全体的に、まったりのんびりとした園芸部での日常が描かれる内容であり、良くも悪くも地味な作風である。部員達はそれぞれに個性的な面々ではあるが、ローテンション&マイペースで行動する者達のため、物語的な起伏は少ない。ただ、それでいて「リアルな部活動」ともまた違う「ほどよい非現実性」が、私としてはどこか心地良い。地味な文化部で青春を過ごした者には、彼等の言動の随所にどこか共感出来る要素が感じられるのである。たとえるならば「あ〜る不在の光画部」かな?(なんか違う気もするけど)
 テニス描写に関しては、園芸部の隣に女子テニス部があるため、それなりにテニスの風景は描かれるが、基本的に女子テニス部(特にその部長と顧問)は悪役なので、物語的にはロクな扱いではない。でもまぁ、彼女達との攻防戦を描いた1巻の最後の物語などは、ちょっと面白いかな。2巻以降は出番も減ってしまうが、終盤でも(描写は僅かだが)同部の部長はいい形で出番を貰えているので、個人的にはその点がちょっと嬉しかった。
 多分、読み手は選ぶ作品であるし、一般ウケはしないだろう。日和の同期の木下小春は萌えだけど、それだけで推せるほどのインパクトはないしね。ただ、全体的に「季節」や「空気」を感じさせる演出は上手いし、この世界観の中に入り込んでしまうと、これはこれで結構楽しめる。ちょっと胡散臭いカンジの文化部漫画が好きな人にはお薦めかな。