寺島優(原作)/土山しげる(漫画)『シンデレラ・スマッシュ』

連載:不明
単行本:日本文芸社ゴラクコミックス(1988年) 全2巻


 『テニスボーイ』の原作者である寺島優と、『喰いしん坊!』や『極道めし』などで有名な土山しげるとのコンビで描いた作品(本作品の前に『シンデレラ・グリーン』という漫画も描いている)。掲載誌は不明だが、レーベルから察するに『漫画ゴラク』系の雑誌ではないかと推測される。
 物語は、流星学園中学の三年生・木村英介が、アメリカ帰りの美少女・神谷久美子と登校中に遭遇する場面から始まる。久美子の特技はテニスだが、学業を疎かにするという理由で両親に止められている。故に物語の序盤は、慣れない日本の風習に戸惑う久美子と英介達とのドタバタ系ラブコメが中心であるのだが、2巻では物語の中心がテニス部へと移り、中等部の主将・西郷誠や、高等部の主将・天宮麗華などが久美子や英介達と関わることになる。
 基本的には、良くも悪くもB級臭の漂う青春漫画である。物語的には色々とツッコミ所も多いし、活発少女の久美子も、お調子者の英介も、極めてテンプレ的なキャラではあるが、全体的にテンポが良く、非常に読みやすい。
 また、久美子の身体付きは肩幅や太腿も含めて肉感的であり、パンチラや入浴シーンなども多いが、その大半はあくまで健康的なお色気のレベルに留まっており、クドさを感じない。
 テニス描写に関しては、「悪者が登場」→「久美子がラケット&ボールで成敗」という展開が多く、それはコート内に限らず、剣道部相手にテニスで対抗するという異種格闘戦も描かれる。その意味で、あくまでトンデモ系の内容ではあるが、フォームやラケットの描き方などは丁寧で好感が持てる。というか、基本的に絵が上手いよね、この人。
 おそらく、「アメリカ帰り」という響きに無条件の憧れを抱くことが出来た最後の時代における作品だと思う。そんなお気軽な80年代後半の若者達の青春劇を、あまり肩肘張らずに気軽に楽しむのが、この種の作品の正しい読み方であろう。