梶原一騎(原作)/川崎のぼる(作画)『巨人の星』

漫文巨人の星全11巻セット (講談社漫画文庫)

漫文巨人の星全11巻セット (講談社漫画文庫)

初出:『週刊少年マガジン』(1966-1971年)
単行本:講談社マガジンKC(1968-1971年) 全19巻
    講談社KCスペシャル(1990年) 全11巻
    講談社漫画文庫(1995年) 全11巻
    講談社KCデラックスHGT版(2003年) 全7巻
    講談社プラチナコミックス(2009年) 全7巻


 日本のスポ根文化の始祖である梶原一騎と『いなかっぺ大将』などで有名な川崎のぼるが描いた『週刊少年マガジン』の看板作品。1968年にはアニメ化を果たし、史上空前の大ブームを巻き起こした。関連作品として、正統続編の『新巨人の星』、続編的スピンオフ作品の『巨人のサムライ炎』、舞台を21世紀に移したスピンオフ作品の『新約「巨人の星」 花形』が存在する。
 物語は昭和33年春の長嶋茂雄の巨人入団パーティーから始まる。「史上最大の三塁手」誕生への期待で沸き上がる中、川上哲治が「幻の史上最大の三塁手」としての星一徹について語っていたその時、一徹の秘技「魔送球」を長嶋に向けて投げつける小学生・星飛雄馬が現れる。その後、一徹の息子である彼は、巨人の一員となることを目指して、父の下で特訓を重ねていく。
 そんな小学生時代の飛雄馬の前に現れた最初のライバルが、自動車会社・花形モーターズの御曹司でもある不良少年・花形満である。彼の繰り出す「ノックアウト打法(打球で相手選手をKOする打法)」はテニスの技術を応用した必殺技であり、本編では彼が自宅の庭のテニスコートで、ラケットの代わりにバットを使って、元・一流テニス選手を圧倒する場面が描かれる。
 一方、飛雄馬はその殺人打法を破るため、更に奇想天外な作戦で花形に対抗する。この対決こそが小学生編の最大の山場であり、その後の高校野球編〜プロ野球編を通じて飛雄馬の最大のライバルとして立ちはだかる花形満の原点が、まさにこの「テニスの技術を応用した殺人打法」だったのである。
 とかく「熱血」「根性」などの精神面ばかりが注目されがちな本作品であるが、物語としての面白さの源泉はむしろ、テニス、柔道、陸上、ボクシング、剣道など、様々なスポーツの要素を取り入れた荒唐無稽かつトリッキーな戦術&駆け引きなのである。そして本作品で確立された「超人スポーツ漫画」の様式は、以後の数多のスポーツ漫画へと継承されていくことになる。