河方かおる『OPEN SESAME』

OPEN SESAME(1) (講談社コミックス)

OPEN SESAME(1) (講談社コミックス)

連載:『マガジンSPECIAL』(2000年〜2008年)
単行本:講談社マガジンKC(2000年〜2008年) 全20巻


 『もっとGOODキッス』などで有名な女流少年漫画家・河方かおるが、『マガジンSPECIAL』で描いた8年間にわたって連載したラブコメ作品。
 主人公は、静岡県・波島出身の高校生で、ボクシングの東海地区新人王・壇上大和。彼が東京の麻布学院高校へと転校することになり、初めて訪れた渋谷で、同校の女学生・最上槇と出会う場面から物語は始まる。その後、同校で槇と再会した大和が自己紹介すると、唐突に彼は槇に投げ倒されてしまう。それは、彼の心の中に封印された、ある過去の出来事が原因であった。
 麻布学院高校は元女子校で、男子生徒は若干名しか存在しないため、必然的に本作品は大和と数多の美少女達による御都合主義的なハーレム漫画として展開される。ただ、当初はモブ扱いだった他の男子生徒達からも、中盤以降は少しずつ幸せになっていく者が現れる辺りが、個人的には好印象。
 また、その一方で、実は主人公が記憶を失っていて、しかも物語当初の時点ではその自覚すらないという状態から、長い時間をかけて少しずつその過去が判明していくという構成も面白い。ただ、この主人公の記憶回復の過程の最後の段階の最重要場面の描写が正直言って説明不足で、「大和がどの時点で、どこまで思い出したのか?」が分かりにくいのが残念な点である。
 ちなみに、テニス描写については、一番最初に槇と大和がテニスで勝負する場面以外は(一応、槇の後輩となるテニス部の少女も登場するが)あまり物語の中核に絡む形では描かれない。また、そもそもこの人の絵はスポーツを描くのには向いていないので、演出的にもあまり期待はしない方がいい。
 とはいえ、個人的にこの人の絵柄自体は好きなので、純粋に美少女漫画として読む分には十分に楽しめた。ただ、中盤まではメインヒロインに次ぐポジションにいた筈の少女が、最終盤で何の説明も別れの描写もないままフェードアウトさせられた点だけは、どうにも納得出来ないのだけどね。