完結後に読む者の視点

 何度も繰り返し述べてきた通り、このブログはあくまで「完結した作品」に限ってレビューしている訳ですが、「完結前のレビュー」に全く価値がないと言うつもりはありません。むしろ、「連載中の作品」だからこそ書けるレビューもあると思います。それは、「完結前でなければ味わえない楽しみ方」も確かに存在しているからであり、その時点での楽しみを他の人に伝えることも、漫画レビューという媒体が果たしうる一つの可能性だと考えているからです。
 もう少し具体的に書くと、たとえば「何巻で終了するか?」ということを最初から分かっているか否かによって、読む側の視点は変わってくると思うんですよ。
 仮に「全10巻で完結した恋愛漫画」があったとして、3巻の時点で主人公が相手役と「いい関係」になろうとしていた場合、連載中であれば「これで終わるのかな?」という可能性を視野に入れながら読む訳ですが、全体の巻数が分かった状態で読むと「ここからまた色々と横槍が入るんだろう」という予想が先んじてしまうので、ワクワク感が削がれてしまうんですよね(ただし、稀に『ビーナスは片想い』のように、カップル成立後もまったり長々と続く作品もある訳ですが)。
 で、大抵の連載作品は、少なくとも最初の時点では「何巻で終わり」とは決めずに描かれるので、読者は常に「今のエピソードは、本当にクライマックスなのか? まだ続くんじゃないのか?」と無限の可能性を想定しながら読める訳です。その楽しみを奪っているという時点で、「完結後にまとめて読む」というスタイルは、実は連載漫画の本来の楽しみ方としては正道ではないのかもしれません。
 ただ、逆に言えば「完結後にまとめて読む」というスタイルだからこそ、見えてくる面白さもあると思うのですよ。終了巻数が分かっているからこそ、どこが本当のクライマックスなのか、ということをある程度予想して読める分、ワクワク感は損なわれますが、より濃密な読み方が出来るのではないかと。
 つまり、ある程度の長編作品を読む場合、「連載作品」として読む場合と、「完結作品」として読む場合では、当然、視点も楽しみ方も違ってくるので、それぞれに異なるスタイルのレビューがあっていいんじゃないかな、というのが私の考えである訳です。
 ただ、現在人気のある「漫画レビューサイト」の大半が、リアルタイムで「雑誌連載or単行本新刊」を追いかけるスタイルで、完結後にまとめてレビューするサイトがあまりない(=需要がない?)ことを考えると、やっぱり前者の楽しみ方の方が正道なのかもしれませんね。