河方かおる『もっとGOODキッス!』

もっとGOODキッス! 7 (少年マガジンコミックス)

もっとGOODキッス! 7 (少年マガジンコミックス)

連載:『少年マガジンスペシャル』(1991〜1997年)
単行本:講談社マガジンKC(1991〜1997年)


 『OPEN SESAME』の作者でもある河方かおるの初期の代表作。読者の体験談に基づいて「ファースト・キスまでの物語」を描くというコンセプトのオムニバス作品であり、合計83本にわたる恋愛劇が描かれることになるのだが、その中には「テニス少女」が登場する物語が三編存在する。
 第26話(第7巻収録)「ベスト・カップル」では、少女のような顔の中学生の男子写真部員・蒲原恵(かんばら・さとし)と、ボーイッシュな女子テニス部員・彼杵晶(そのき・あきら)が、周囲の人々が気付いていない、それぞれの「隠れた意外な魅力」に惹かれ合っていくエピソードが描かれる。
 第25話(第9巻収録)「誘惑・困惑 夏合宿」は、高3のテニス部員・新庄暁(あきら)が、軽井沢でのテニス合宿において、付き合って半年の女子テニス部3年の羽柴美佳との仲を進展させようと画策するも、中等部の美少女・榊梨々子(さかき・りりこ)に迫られてドギマギさせられる、という物語。
 第66話(第17巻収録)「世界で一番愛してる!」では、高1で初心者の新入生部員・岡本健が、一つ年上で美人な女子テニス部のエース・吉田泉の特別特訓を受け、彼女への憧れの気持ちを恋心へと昇華させていくことになる。
 作品の方向性は同時代の『BOYS BE...』に似ているが、物語がより徹底的に様式化されており、大半の話が「女の子といいムード→誤解発生→誤解解消→キス」で終わる(ただし、稀に「別れのキス」で終わる話もある)。悪く言えばワンパターンだが、個人的には、こういった「安心して読める恋愛漫画」は結構好き。また、中には女性読者からの投稿に基づく女性視点の話や、キス経験後の「初体験」を描いた番外編シリーズなどもする。
 多分、リアルタイムで青春を満喫中のリアル中高生よりも、既にそんな気持ちを味わえない立場になった、私のようなおっさん世代の方が、こういう「付き合う直前」や「付き合い初めの頃」の恋物語を心から楽しめるんじゃないかな。