新井理恵『×−ペケ−』

×ーペケー 1 (小学館文庫 あE 4)

×ーペケー 1 (小学館文庫 あE 4)

連載:『別冊少女コミック』(1991〜1999年)
単行本:小学館別コミフラワーコミックス スペシャル(1992〜1999年) 全7巻
    小学館文庫(2010年) 全3巻


 現在は『スピカ』にて『机上意思マスター』を連載中の新井理恵の代表作である四コマ漫画。『別冊少女コミック』において9年にわたって連載し、(他誌で掲載された別の四コマ作品と共に)単行本は全7巻で販売された。また、少女漫画の四コマ作品としては異例の「イメージCD」も存在する。
 主に高校生を題材としたオムニバス四コマ集。明確な主人公は存在せず、彼氏に対して不条理なまでに冷酷な態度を取り続ける白鳥瞳、周囲にガン飛ばしながら黙々と善行を重ねる山本晃司、妄想癖の激しい陰鬱少女・岡本夢路、どう見てもウサギにしか見えない因幡浩など、多種多様なキャラクター達が、それぞれ独自のキャラを生かしたシュールな笑いを展開させていく。
 日常的なあるあるネタや、超常的存在と日常とのギャップを楽しむギャグなど、様々なバリエーションの四コマ(+α)が繰り広げられており、全体に漂う奇妙な不条理感は当時の少女漫画界&四コマ界に革命をもたらし、多くのフォロワーを生み出した。まさにエポックメイキングな作品である。
 一方、そんなシュールなセンスと共に本作品を語る上で外すことが出来ない要素が、各四コマのタイトル横のコメント欄や登場人物の台詞などを通じて吐き出される、世間・読者・同業者・編集者などへの「毒」である。特に同業者&編集者への皮肉の数々は非常に毒々しく、それらを一つの「味」として捉えられるか否かが、この作品への評価を分ける重要な分水嶺だろう。
 そして本作品のテニス要素として、主要人物の一人である日渡先生という教師が軟式テニス部の顧問という設定が存在するのだが、正直言って物語的には殆ど意味のない設定にすぎない。むしろ重要なのは、全く別の主要人物の一人がテニス部であるということが最終回で明らかになる、という衝撃のラストなのだが、これ以上はネタバレがすぎるので書けない。と言っても、実質的には7巻の表紙で既にネタバレされてるんだけどね。