そもそも「少年漫画」って、何?

 先週の雑談記事が思ったより好評で、色々と反響を呼んだので、今週はその中で派生した「少年漫画」の定義という問題について、取り上げてみようと思います。
 先週の時点で私が「少年漫画」として想定していたのは、故・キングを含めた五大週刊少年誌およびその派生誌(ただし「ヤング〜」は青年誌なので除外)でした。しかし、その他にも「少年誌」に分類すべきか微妙な雑誌が色々と存在することを改めて実感したので、以下で系統別に考えてみたいと思います。
 なお、最初に言っておきますが、別に「結論」を出す気はないです。あくまで「問題提起」なので。


1、五大少年誌の派生誌
 いわゆる五大週刊少年誌の派生誌(という言い方が妥当かどうかそもそも怪しいですが)の中で、雑誌名に「少年」が入っている雑誌は、問題なく少年誌と分類していいでしょう。実質的には『月刊少年マガジン』などは、対象年齢的には青年誌に近い気もしますが、それを言い出すと「じゃあ、今のWJは少女誌(腐女誌)なのか?」といったメンドくさい議論になるので、あくまで「自称」を基準にしたいと思います。
 で、そう考えると、実は『ジャンプSQ』という誌名には「少年」が入ってないんですよね。前身は『月刊少年ジャンプ』なのですが、旧ロザバンの最終巻の四コマで「続編掲載は青年誌」などと書かれていた辺りから察するに、少なくとも編集部側は「少年誌」と位置づけてはいないようです。おそらく戦略的に、あえて「少年誌」であるとは定義せず、幅広い層を狙った雑誌というスタンスを採っているのではないかと。一応、全ての漢字にフリガナはついてるので、その意味では少年誌的なスタンスなんですけどね。
 同様に、表現的な意味でよく特殊な事例に挙げられる『チャンピオンRED』および『いちご』はどうなのか、という問題もある訳ですが、あくまで「少年誌」を自称している以上は、そっちに含めるべきなのでしょうか。


2、マニア誌の位置づけ
 上記の「1」に対して、「なぜ、少年誌を五大少年誌系に限る必要がったのか?」「『少年ガンガン』や『少年エース』は少年誌ではないのか?」と考える人達も多いでしょう。
 この辺りの認識の差が世代間のものなのか、あるいは私個人の考えが異端なだけなのかは分かりませんが、私の中では「少年誌」や「少女誌」というのは「普通の少年少女が読む漫画」であって、それとは別に「普通の漫画では飽き足らないオタク層が男女の枠を超えて読む雑誌」としての「マニア誌」あるいは「中性誌」と呼ぶべきジャンルがあると考えていたのです。
 この典型例が、80〜90年代における『コミックNORA』や『Wings』です。前者は既に亡く、後者は今でこそ少女向けの印象が強いですが、当時は真鍋譲治なども連載しており、普通に「男の子向けの漫画」と「女の子向けの漫画」が共存している状態でした。故に、私の中では世の中の漫画雑誌は「少年誌/青年誌」「少女誌/レディース誌」「男女問わないマニア誌」という三つの分類に分かれると考えていたのですよ。
 で、同時代の『コンプ』『キャプテン』『ガンマ』などもこの部類の雑誌だと私の中では位置づけられていたのです。確かに、これらは上記に比べると男性向けの内容だったとは思いますが、それはあくまで「男性寄りのマニア誌」であって、「少年誌」とは区別されるべき雑誌なのだと(「女性寄りのマニア誌」としては『Asuka』や『CAIN』などを想定してました)。
 故に、『コンプ』の後継誌である『少年エース』に関しては、たとえ「少年」と冠していようとも、それは「少年誌」とは別のジャンルだと思っていたのです。『少年ガンガン』に関しても、これらと同系統の雑誌だと思って読んでいたので、これらが「当然、少年誌に含まれるだろう」という見解を聞いた時は、ちょっとカルチャーショックでした。
 ただまぁ、冷静に考えれば、別に普通の少年誌も女性読者を意識した作品が載ってることは多い訳ですから、こういった「中性誌」なるカテゴリーを想定すること自体が、実質的には意味を成さないのかもしれないですね。


3、児童誌との境界線
 児童誌の双璧と言えば『コロコロ』&『ボンボン』な訳ですが(後者は既に存在しませんが)、これらの雑誌に掲載された作品は、単行本のレーベル的には明らかに(サンデーやマガジンなどの)少年誌連載の単行本と区別された形で発売されているので、その意味では、やっぱり「男の子向けの児童漫画」は「少年漫画」からは区別すべきなのかな、と思います。
 ただ、、年齢層的にはコロコロに近いと思われる『ちゃお』に関しては、少なくとも90年代頃までは、殆どの漫画は(『少女コミック』と同じ)「フラワーコミックス」から出てるんですよね。しかも、「コロコロの妹」という位置づけであった『ぴょんぴょん』から移籍していた作品群も、大半はその枠組に入っていた訳です(唯一の例外として、『あさりちゃん』はもともと学年誌主体だったので「てんとう虫コミックス」のままでしたが)。
 つまり、少女漫画の世界では「児童誌」と「少女誌」の境界線が非常に曖昧な訳で、そのことを考慮すると、そもそも「児童誌」というくくり自体が不適切なのかもしれません。『りぼん』系に至っては、単行本は『NANA』と同レーベルという扱いですしね。


4、漫画雑誌以外に連載された作品
 ここまで、基本的には「掲載誌」を基準に考えてきましたが、中には「そもそも漫画雑誌に掲載されていなかった漫画」もあるんですよね。たとえば『ファミ通』などのゲーム雑誌に掲載されていた漫画(『しあわせのかたち』など)の場合、どちらにも分類しようがありません。ゲーム雑誌の読者層は男性が大半でしょうが、それを理由に「少年漫画」と言って良いかというと、ちょっと疑問です。
 また、『小学○年生』や『中学○年コース』などの「学習雑誌」に掲載されていた漫画も、分類が難しいです。前者は「児童漫画」に入れることも出来ますが、後者の場合は中学生が対象ですので、少なくとも「児童漫画」ではありません。かといって「学習漫画」と言ってしまうと、「まんが世界の歴史」などを指す言葉のような印象を与えてしまいますが、明らかに普通の少年漫画と変わらないような作品も多いです。
 他にも、新聞漫画としての『忍たま乱太郎』や、週刊単行本としての『藤子不二雄ランド』に掲載されていた『ウルトラB』や『チンプイ』なども、「少年漫画」のくくりに入れていいのかどうか、と考えると、段々訳が分からなくなります(これらの作品群に関しては、内容的には「児童漫画」だと思いますが)。
 そんな訳で、そもそも「掲載誌」を基準とした分類自体が、やっぱり無理があるのかもしれません。しかし、かといって「単行本」のレーベルを基準にするならば、「単行本化されていない作品はどうするのか?」という問題が生じるんですよね。
 じゃあ、そんな形式的な議論をやめて、実際に内容が少年向けか、少女向けか、青年向けか、児童向けか、といった点に基づいて分類しよう、とか言い出すと、主観と主観のぶつかり合いで、いつまで経っても話がまとまらない訳です。


 そんな訳で、最初に申し上げた通り、やっぱり「結論の出ない問題」だと思うんですよね、「少年誌の定義」って。あくまで正解はないと割り切った上で、皆さんの中でのそれぞれの定義を、参考までに教えて頂けると幸いです。