秋本治『Mr.Clice』
- 作者: 秋本治
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1989/04/10
- メディア: コミック
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単行本:集英社ジャンプコミックス(1989〜2003年) 全5巻
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の作者として有名な秋本治が、同作品の連載と並行して、『月刊少年ジャンプ』にて長期にわたって不定期で描かれた作品。単行本は全5巻だが、掲載誌の休刊により、中途半端なタイミングでの終了を余儀なくされたため、最後の2話は単行本には収録されていない。
主人公は、国家特別交錯機関のエージェント・繰巣陣(くりす・じん、通称:クリス)。事故で一度命を失った彼が、同時期に死亡した女性のテニス選手の身体に脳を移植することで蘇り、再び様々な事件を解決していく、という物語。イタリア人の捜査官・ベラマッチャとのコンビで世界中を飛び回り、様々な犯罪組織や殺し屋達との死闘を演じることになる。
クリスは脳移植だけでなく、相当な額の国家予算を注ぎ込んだ身体改造が施されており、超人的な戦闘能力を身につけているのだが、そのベースとしての身体が「女子テニス選手」という設定なのは、「身体能力の高い美人」の代名詞として、最も説得力がある職業だと考えられたからであろう。ちなみに、残念ながら本編ではテニスが描かれる場面は一度もない。
全体的なコンセプトはハードなスパイ・アクション作品であるが、所々でコミカルな描写も多く、ドタバタ劇風味の展開も多い。また、『こち亀』でも時折見られる作者のミリタリー趣味がフルで発揮された作品でもあり、銃火器から空母・戦闘機に至るまで、様々な兵器類が本編で登場し、それらの特性を物語のギミックとして組み込んだエピソードなどが展開される。
実は、明確な形での「最終回」は描かれていないので、完結作品専門のこのレビューで取り上げて良いかどうかは微妙な位置付けでもある。実際、今年の『ジャンプSQ』11月号には『こち亀』とのコラボ漫画も掲載されており、作者自身も「続きを描きたい」と言っているので、私としても、密かに気長に、彼女の活躍がまた見られることを心待ちにしたいと思う。