永吉たける『スミレ16歳!!』

スミレ 16歳!!(3) (講談社コミックス)

スミレ 16歳!!(3) (講談社コミックス)

連載:『週刊少年マガジン』『マガジンSpecial』(2006〜2009年)
単行本:講談社マガジンKC(2006〜2009年) 全5巻


 現在は『月刊少年ライバル』にて『いますぐクリック!』を連載中の永吉たけるの初連載作品にして代表作。前身は『マガジンSpecial』に連載されていた『スミレ17歳!!』(全2巻)で、『週刊少年マガジン』への移籍に合わせて設定をリニューアルして再スタートした(ただし、その後、掲載誌は再び『マガジンSpecial』へと戻る)。2008年にはドラマ化も果たした。
 物語の進行役となる実質的な主人公は、高校一年生の大山蓮華(通称:レンゲ)。彼女が高校入学初日に、謎の中年男性(通称:オヤジ)に操られた等身大の女子高生型腹話術人形・四谷スミレと出会う場面から物語は始まる。まるで生きた一人の少女であるかのように振る舞うスミレ(を操るオヤジ)に皆が違和感を感じつつも、彼女(?)の友達想いで正義感溢れる言動に、いつしかレンゲ達は心惹かれ、級友として受け入れていくことになる。
 スミレが人形であること以外は、至極正統派の青春友情漫画であり、シリアスな人情話とスミレ(とオヤジ)の不気味な存在感のギャップが、不思議な笑いと感動を同時に生み出している。また、物語が進むにつれて、スミレ以外にも様々なクセの登場人物が次々と登場するのだが、それらを次々と「自分の世界」へと引き込んでしまうスミレのキャラの強さはハンパない。
 そして第3巻収録の第29話では、スミレ&極道少女・桐生あけびが、同巻から登場する小悪魔少女・黒木アゲハ&テニス部のキャプテン(国体1位)とテニスのダブルスで対決する話が描かれる。テニスに関してはほぼ素人のスミレ(とオヤジ)だが、腹話術人形であることを(結果的に)生かした奇想天外な戦法(?)で相手を翻弄していく展開が、無茶苦茶すぎて面白い。
 結局、最後までオヤジの正体は明かされないまま終わるのだが、本作品の魅力の本質を考えれば、その判断で正解だったと思う。よく分からない存在のままだったからこそ、最終回はちょっと感動させられてしまったしね。