国友やすゆき『優と勇』

優と勇 4 (少年チャンピオン・コミックス)

優と勇 4 (少年チャンピオン・コミックス)

連載:『月刊少年チャンピオン』(1984〜1986)
単行本:秋田書店チャンピオンコミックス(1985〜1986年) 全5巻


 『JUNK BOY』『100億の男』などで有名な国友やすゆきが、『月刊少年チャンピオン』で描いた連載作品。単行本は全5巻で、最終巻にはなぜか『どはずれ新鮮組』の番外編(完結編?)が掲載されている。近年の作者は『総理の椅子』(ビッグコミックスペリオール)、『新・幸せの時間』(漫画アクション)、『時男〜愛は時空を超えて〜』(週刊ポスト)を連載中。
 主人公は、イラストレーターを目指す17歳の活発少女・森見優と、その双子の弟で内気な優等生の森見勇。名前と中身が逆と言われるこの姉弟と、勇のバンド仲間のパンク男・山川祐清(スケキヨ)の3人を中心として、彼女等の夢と恋に燃える青春の日々をコミカルに描いたドタバタ劇作品である。
 優のモデルは同名の某アイドルであり、何事に対してもアクティブに取り組む姿勢が、この時代の開放的な女性像を代表していると言えよう。また、イラストレーターという職業自体が「時代性」と極めて密接に絡んだ職業であるため、この当時の「最先端の感性」が作中の様々なデザインなどに取り入れられており、当時の世相を知る上での資料としても面白い。
 そして第4巻収録の「あのコとスキャンダル…したい!」では、優が取材のために勇や友人達と共に八ヶ岳のペンションに行くことになり、そこで勇が憧れの美少女・秋場麗子と共にテニスに挑戦する話が描かれる。と言っても、描写自体は5〜6頁で、まともに打ち合う場面すらなく、あくまでも「別荘地でのファッション・テニス」という、古典的演出以上の意味はない。
 ちなみに、本作品では随所で作者の分身が登場しており、ここでも「軽井沢あたりで、レイヤードカットのJJガール フェリス青短風女子大生とちゃらちゃらテニスやってやがる まるきん健全優等生アイビー慶応成蹊みてーなやつらが、いっちゃんでーきれえだあああっ!」と涙ながらに主張している。いかにも早稲田出身らしい作者の感性が垣間見れる一コマで、実に面白い。