カジワラタケシ『彼女はデリケート!』

連載:週刊少年マガジン(1989〜1991年)
単行本:講談社マガジンKC(1989〜1991年)


 成年漫画家にしまきとおるが、「カジワラタケシ」名義で『週刊少年マガジン』に連載した作品。当初は「僕の夏・ビーナス物語」というタイトルの読切作品として1988年に発表され、その続編という形で連載が開始された。現在の作者は『アクションピザッツ』(双葉社)などで活動中。
 主人公は、14歳の男子中学生・星野達郎。特に何の取り柄も持たなかった彼が、友人の代役でボクシングの試合に出場したことを契機に、徐々にその才能を開花させつつ、聖アリス学園の裏番・朝霧夏美(メインヒロイン)、ボクシング部のマネージャー・神崎まりな、イギリス人ハーフのリサ・クリスティなど、様々な美少女達に囲まれるハーレム的青春を送る物語。
 女性キャラの大半が(かなり極端に強調された)巨乳美少女であり、連載当時は彼女達のフィギュアが発売されるほどの人気であったらしい(この時代では極めて異例)。そのため、第一部(中学編)はボクシングとラブコメの二本柱構成だったのが、第二部(高校編)では純粋なラブコメ路線へと特化することになる(ただし、最後は再びボクシング主体の物語へと戻る)。
 そして高校編では、テニス部員のキャラとして、達郎の級友の相田翔と、学園のアイドル的存在である上条えりかが登場するが、その設定が生かされる物語は一切なく、えりかのテニスウェア姿が何度か描かれる程度である。また、中学編で一度だけ夏美がテニスをする場面が描かれるのだが、スコートではなくブルマ姿なので、おそらく部活ではなく、体育の授業であろう。
 なお、上述の「相田翔」およびその相方としての「鈴木早智夫」に代表されるように、当時の芸能人や他作品のパロディ的な要素も多い(夏美は明らかに鮎川まどかのオマージュ)。正直、絵的にも物語的にも、純粋に今の若年層が読んで楽しめる内容とは思えないが、こういった時代背景を感じ取りながら、当時の世相を体感する資料としては興味深い作品と言えよう。