桜野みねね『まもって守護月天!』

まもって守護月天! (1) (Blade comics)

まもって守護月天! (1) (Blade comics)

連載:『週刊少年ガンガン』(1996〜2000年)
単行本:エニックス・ガンガンコミックス(1997〜2000年) 全11巻
    マッグガーデン・Blade Comics(2003年) 全10巻


 90年代後期の『少年ガンガン』を支えた人気作の一つであり、作者の桜野みねねにとっての出世作にして代表作。1998年にはTVアニメ化、2000年にはOVA化を果たした。その後、連載は未完のまま休載状態となるが、2001年のエニックス分裂騒動を経て『コミックBLADE』にて続編『まもって守護月天!〜再逢〜』が描かれ、更に近年では電子書籍版で番外編が発表された。
 主人公は、中学二年生の七梨(しちり)太助。海外を旅する家族と離れて日本で一人暮らしをしていた彼の元に、父が中国で手に入れた謎の宝具「支天輪」が届く場面から物語は始まる。彼がその支天輪の中を覗くと、そこから「守護月天小璘(しゅごげってんシャオリン/通称:シャオ)」と名乗る精霊の少女が現れ、彼をあらゆる不幸から守ろうと奮闘することになる。
 初期の頃は上記の二人を軸としつつ、シャオのライバルである慶幸日天汝昴(けいこうにってんルーアン)や、シャオに恋する若き神主・宮内出雲、太助の後輩の愛原花織などを絡めたドタバタ・ラブコメが中心であり、その一環として、第1巻収録の第6話では、太助と出雲が、シャオとのデート権を巡ってテニスで争うエピソード描かれる(ただし、描写の密度は薄い)。
 一方、物語が後半に入ると、シャオの背負う守護月天としての宿命に起因するシリアスな恋物語が中心となるのだが、個人的にはこの後期の話の方が面白いと思う。特にモノローグの使い方を含めた感情描写は実に見事で、太助とシャオの双方の視点から、読者を巧みに物語に引きずり込んでいく。
 ただ、残念ながら、そのシャオの宿命を克服法は(続編も含めて)明確に描かれないまま中途半端な幕引きとなってしまっており、いずれ何らかの形で完結編が描かれることが望まれる。ちなみに、私のお気に入りは太助の幼馴染みの山野辺翔子。賑やかし役のトラブルメーカーでありながらも、太助とシャオの恋を進展させようと彼等を後押しする姿が印象的だった。