小野寺浩二『カバディ7』

カバディ7 ?

カバディ7 ?

連載:『月刊コミックフラッパー』(2010-2012年)
単行本:メディアファクトリー・コミックス(2011-2012年) 全3巻


 『妄想戦士ヤマモト』や『それいけ!! ぼくらの団長ちゃん』などで有名な小野寺浩二が、『月刊コミックフラッパー』にて連載した作品。「日本カバディ協会」公認のカバディ漫画でもある。現在の作者は、今月発売の『ヤングキングアワーズ』から始まる新連載「ソレミテ〜それでも霊を見てみたい〜」を執筆中。
 主人公は、インド人ハーフの高校生・北斗クシャトリア。日本の侍に憧れ、玉鋼高校へと転校してきた彼が、カバディ部設立を目論む女子マネージャー・円谷まどかの口車に乗せられて同部への入部を決意し、個性豊かな6人の仲間達と共に、カバディ部の一員として様々な強敵達と戦う物語。序盤は実在するカバディ大会に出場していた彼等であったが、中盤以降は、セパタクロー、男子ラクロスクリケットなど、様々なマイナースポーツの競技者達とカバディ戦う「カバディ甲子園」での死闘が描かれることになる。
 初期島本和彦作品(『炎の転校生』や『燃えるV』など)に通じる「どこか間違ったアツさ」を全面に押し出した熱血スポ根コメディであり、最近の言葉で表現するなら「シリアスな笑い」という言葉が最も似合う作品である。武士道にこだわる北斗を初めとして、大食漢の権田原大吉、ナルシストの仁藤光秀、美少年なのに筋肉フェチの向井優といった面々が、それぞれが心に抱く「こだわり」や「人生観」に基づいて、カバディという特殊な舞台で独自のプレイスタイルを生み出していく展開は、インドの伝統競技カバディの持つ奥の深さと、青春という限られた時空に秘められた無限の可能性を体現していると言えよう。
 その中でも特に強烈な個性を放っているのが、テニス部出身の変態少年・志村慎ノ介である。彼は女子部員への盗撮がバレてテニス部を追われることになったのだが、その際の彼の言い放った魂の叫び、そして、彼の「同年代の女子生徒へのセクハラ」への渇望の慟哭は、全ての男性読者の心を掴んで離さない。彼の言葉に一切賛同出来ない男性は、もはや男性の魂を失ってしまった生きる屍と言っても過言ではなかろう。
 また、物語全体のテーマとしてはカバディを取り扱いつつも、対戦相手となる他種目の競技者の面々も実に魅力的に描かれているため、それぞれのマイナー競技の持つ醍醐味を味わいつつ、それらを包み込んで同じ土俵で戦わせることが可能なカバディというスポーツの懐の深さをも堪能することが出来る。その意味でも、カバディ漫画としてだけではなく、普遍的な意味での「青春スポーツ漫画の金字塔」と呼ぶに相応しい作品である。それ故に、正直、僅か3巻で終わってしまったことが非常に惜しまれる作品なのだが、逆にこの尺の中に収めたからこそ、ここまでの高密度な暴走作品に仕上げることが出来たのかもしれない。