杏崎もりか「3カラットの星が降る」(『かりそめのウィスパー』収録)

かりそめのウィスパー (マーガレットコミックス)

かりそめのウィスパー (マーガレットコミックス)

連載:『別冊マーガレット』(1986年)
単行本:集英社マーガレットコミックス『かりそめのウィスパー』


 1980年代のマーガレット系の雑誌で活躍した杏崎もりかの短編作品の一つ。単行本としては『かりそめのウィスパー』に収録された(同時収録は他に「シシリーで眠りたい」)。近年の作者は海王社の雑誌『最高の主婦たち』にて『プロポーズ貧乏』を連載中。
 主人公は、男子校である北東学園高校に通う、二年生の君島悟史。隣街の南西高校の校舎の建て直しに伴い、同校の生徒の一部が北東学園高校に一時的に通うことになるところから物語は始まるのだが、その中に、かつて君島と同じ中学に通っていた、テニス部員の藤森靖奈が含まれていたことが、新たな恋物語を引き起こすことになる、という物語。
 中高生独特の「不器用な恋模様」を描いたという意味では、比較的古典的なテーマではあるものの、最初から最後まで男性キャラ視点で終わっているという点は、少女漫画としてはやや珍しい部類なのかもしれない。
 その意味で、一応、男性心理に関してはそれなりに上手く描き出せていると思うのだが、なぜか私としては今一つこの作品の世界に入り込めなかった。その理由が、絵があまり好みでないせいなのか、物語終盤の唐突な展開にどこか拍子抜けしてしまったせいなのか、と色々考えてみたのだが、多分、サブヒロインの方が私の好みだったことが最大の要因であろう、という結論に落ち着いた。
 テニス描写に関しては、ラケットを持っている藤森達の姿が何度か描かれる程度で、プレイしている場面は皆無である。なので、「テニスを題材とした漫画」とは言い難いのであるが、ネタ切れ気味の当ブログとしては、これくらいの作品までは射程範囲に含めることも許して欲しい。
 絵柄的にも物語的にも、80年代後半のマーガレットという独特の空気の中で醸成された作品であり、今読むと色々と違和感を感じるのは事実だが、これはこれで一つの時代を反映した作品の一つと割り切って、現代における少女漫画とのギャップを楽しむ形で楽しむのもまた一興と言えよう。