柴田昌弘『宗三郎・見参!』

宗三郎・見参! (St comics)

宗三郎・見参! (St comics)

連載:『花とゆめ』(1980〜1984年)
単行本:白泉社花とゆめコミックス『宗三郎・見参!』(1981年)
    白泉社花とゆめコミックス『宗三郎・あざみ地獄』(1983年)
    朝日ソノラマ柴田昌弘作品集2 宗三郎・おとこ菖蒲』(1996年)
    大都社Stコミックス『宗三郎・見参!』(1997年)
    

 「魔法のラケット」や「パル」の作者でもある柴田昌弘が『花とゆめ』で描いた7本の連作シリーズ。「宗三郎シリーズ」などとも呼ばれるが、正式なシリーズタイトルは存在しないので、ここでは便宜的に第一作のタイトルで表記する。単行本は白泉社朝日ソノラマ大都社から出版されているが、全話が収録されたバージョンは存在しない(朝日ソノラマ版と大都社版を買えば、実質的には網羅出来る)。
 主人公は、剣術道場の三男坊で高校生の当麻宗三郎(とうま・そうざぶろう)。シリーズ第一作の「宗三郎・見参!」では、彼と志筑優(しづき・すぐる)&遠藤薫の3人の男子生徒が、ある教師からの密命によって、制度上は共学でありながらも女子生徒しか存在しなかった聖蘭学園へと転入するところから物語が始まる。以後は彼等三人と、聖蘭学園のテニス部主将・臼杵街子(うすき・まちこ)の4人が、毎回登場する様々なゲストキャラ達と共に勃発する事件に巻き込まれていくことになる。
 宗三郎は時代錯誤的な男尊女卑思想の持ち主であると同時に好色家でもあり、少女漫画の主人公にしてはいささか品が無いが、身体を張って全力で様々な事件に立ち向かっていく姿が、街子を初めとする作中の様々な女性達を魅了していくことになる。そんな一昔前の王道学園青春ドラマが、本作品の主軸である。
 そして、第一作の「宗三郎・見参!」と第四作の「宗三郎・五月雨慕情」では、街子がテニス部で活動している場面が描かれるのだが、いずれも数コマの描写に留まっている。ただ、後者の話においては、テニス部という舞台設定自体は演出効果としてそれなりに重要な役割を担っていると言える。
 基本的にこの作者はSF作家なのだが、一方でこういったベタな学園モノも描ける人でもある訳で、こういった作風の幅の広さが、長年にわたって活躍出来る秘訣なのだろう。さすがに今読むと古臭さは否めないが、この時代の青春漫画に特有の、どこか淡くこそばゆい雰囲気が私は大好きであり、若い人達にもぜひ読んでもらいたいと思わせる、そんな作品である。