小山愛子「タマ!!!!〜真夏のグランドスラム〜」

初出:『週刊少年サンデー』(2004年)
単行本:未発売


 現在、『週刊少年サンデー超』とWEB媒体の『クラブサンデー』にて卓球漫画「PING PONG DUSH」を連載中の小山愛子が、『週刊少年サンデー』2004年29号で発表した読切作品。作者の他の代表作としては、小学館の学習雑誌で連載されたDSゲーム『アイアンフェザー』のコミック版など。
 主人公は、軽井沢の杉ノ森小学校に通う少年・タマ。学校一の虫取り名人として有名な彼が、最大の難敵である大王やんまの龍神丸を捕らえようと山中を走り回っていた時に、そこに新コートを構築しようとしていた神月テニスクラブの工事現場に到着する場面から物語は始まる。龍神丸の居場所を守るため、その工事をやめさせようとしていた彼が、その神月テニスクラブの18歳の若社長とテニスで対決することになる、という話。
 試合は、神月が1セット分(24球)のサーブを打ち、その間にタマが1点でも取ればタマの勝ち、というルールでおこなわれる。それでも、プロ入り直前の実力者である神月と、ルールすら知らない全くの素人であるタマでは、本来ならば勝負になる筈もないのだが、サーブを重ねるごとに徐々にタマのタイミングが合い始め、そしてタマが「虫取り」の技術がテニスに応用出来るということを発見するに至ることになる。現実的な整合性はともかく、個人的にはこの手のトンデモ理論に基づく異種格闘戦は結構好き。
 絵柄は、すっきりとした画風でありながらもフォームには迫力があり、さすがにサンデー本誌で起用されるだけの実力者であることが伺える。アップになった時のラケットのガットの描写なども手を抜かずにきっちりと描かれており、テニス漫画好きとしては非常に好感が持てる。
 物語のラストは、様々な解釈が可能な描写となっており、この後の展開に関して読者の想像をかきたてる。でもまぁ、このまま連載化して成功するタイプのネタではないと思うので、良質の読切りとして評価するのが妥当であろう。現在のところはまだ単行本化されるには至っていないが、いずれ作者の短編集などが発売されることになれば、ぜひ収録して欲しい作品である。