上川敦志「テニスのA(エース)」

連載:『小学六年生』(2009〜2010年)
単行本:未発売


 『ロケットボーイズ』(週刊少年サンデー)などで有名な上川敦志(旧PNは上川敦子)が『小学六年生』2009年5月号〜2010年2・3月号にて描いた作品。なお、本作品が掲載されていた2009年度をもって同誌は休刊したため、87年間にわたる同誌の歴史の最後を飾るスポーツ漫画となった。
 主人公は、私立四ツ庭学園初等科6年生の夏神(かがみ)瑛介。学外の仲間と共にバレーに興じていた彼が、同級生のテニス部員・春日寿(かすが・ことぶき)が中等部の先輩・割井に虐待されている場面に遭遇し、彼女を救う為にラケットを握るところから物語は始まる。その後、テニス部主将・上連雀(かみれんじゃく)桜子との出会いや、同級生のライバル・影ノ宮彦一との対決を経て、彼はテニス部への入部を決意することになる。
 小学生を対象としたスポーツ漫画といえば、『ドッヂ弾平』や『イナズマイレブン』のようなトンデモ系作品が多いが、本作品はそれらに見られるような「物理法則を無視した超人技」は殆ど出てこない。打球を相手にぶつけるタイプの暴力技は存在するものの、基本的には努力と友情を賛美する正統派の少年向けスポーツ漫画である。
 また、「ちょっと古い戦術」という前置きの上でサーブ&ボレーを教える辺り、きちんと近年のテニス界の常識を踏まえた上で、テニス漫画としての幅を広げようとしている点が、個人的には共感が持てる。
 そして、瑛介の対戦相手達は、基本的に最初は「イヤな奴」として登場しつつも、最終的には「よきライバル」ポジションへと落ち着いていく展開なので、スポーツ漫画としての読後感は非常に心地良い。
 学年誌漫画には隠れた名作が多いが、本作品もその一つとして語り継ぐに値する作品だと思う。まぁ、地味と言えば地味なので、たとえコロコロあたりで連載しても、それほど一般ウケはしないとは思うのだけどね。