志賀公江『スマッシュをきめろ!』

スマッシュをきめろ! (第1巻) (双葉文庫―名作シリーズ)

スマッシュをきめろ! (第1巻) (双葉文庫―名作シリーズ)

連載:『週刊マーガレット』(1969〜1970年)
単行本:集英社マーガレット・コミックス 全4巻(1970年)
    双葉文庫名作シリーズ 全3巻(1998年)
    ダイソー・コミックシリーズ 全5巻(2002年)


 日本で一番最初に映像(ドラマ)化されたテニス漫画(ドラマ版のタイトルは『コートにかける青春』)。作者の志賀公江は本作が(おそらく)最初の連載作品であり、この後もスポーツ漫画を何本か書いた後、現在はレディースコミックの世界で活躍中。
 主人公は、中学テニス界の天才少女・槇さおり。彼女と、両親の離婚によって彼女と生き別れになった妹・東城真琴との間の愛憎劇が物語の軸となる。ひたすら優等生のさおりと、ひたすら反抗期の真琴の関係が、物語が進むにつれて徐々に変容していく様子が一番の見どころ。思うに、この漫画を楽しめるか否かは、真琴に感情移入出来るかどうかだと思う(私的には直球ド真ん中の萌えツボなんだけどね)。
 サブキャラの中では、この時代ならではの設定の高岡姉妹が特に印象的。逆に言うと、この二人以外のライバル達はあまりパッとしないまま退場してしまっており、本来なら王子様役である筈の大石哲也も今一つ見せ場が少ない。あくまで、さおりと真琴の二人のみに特化した物語として描かれている。
 そして、テニス描写においてはVカットやローリング・フラッシュなど、様々な魔球が登場しており、60年代の魔球系のスポ根漫画の流れを受け継いだ作品(そして、今日まで続く「魔球系テニス漫画」の元祖)と言える。
 ちなみに、新装版の表紙はおそらく最近になって描かれた代物であり、中身は非常に古い絵柄なので、それなりに覚悟して読む必要があるが、ある程度まで読み続ければ、それもさほど気にはならなくなる(と思う)。
 全体的には「良くも悪くも時代を反映したスポ根」といった内容。最後のロンドン編は中途半端なところで終わっているので、最終的には打ち切りだったのかもしれないが、日本における最初期のテニス漫画の一つとして、一読の価値はある。