Sachiyo『カッとび!!』

カッとび!! 1 (マーガレットコミックス)

カッとび!! 1 (マーガレットコミックス)

連載:『マーガレット』(2003〜2004年)
単行本:集英社マーガレットコミックス(2003〜2004年) 全3巻


 隔週誌『マーガレット』にて連載された高校テニス漫画。作者のSachiyoはこの前に『王様ゲーム』(全2巻)を同誌で発表しており、本作品が二作目の連載作品となる、『マーガレット』期待の新鋭作家の一人である。
 高校ソフトボール界屈指の強打者であった主人公・川原理央が、ソフト部のない高校に転校し、そこで一目惚れした天才テニス少年・立涌翼(たてわき・つばさ)の勧めで同校の強剛テニス部に入部する、という物語。理央が、ソフト時代の癖を直しながらもその特性を生かした選手へと成長していく展開が一つの見どころなのだが、どうやら作者自身もソフト部の部長を務めていたそうで、その独特の視点はなかなか興味深い。
 とはいえ、物語の本筋は、どちらかというとテニスそのものよりも、理央と翼、そして鮫島紫(さめじま・ゆかり)や明里サヤカ(あかり・さやか)といった翼の周囲の女性陣との間のラブコメの方であると言える。特に、ストーカー気味の理央&紫と、ひたすらドライなサヤカの対比は面白い。
 そして、この作品の最大の魅力は、なんと言ってもテンポの良さである。テニスにおいてもラブコメにおいても、シリアスとギャグの切り変わりのテンポが絶妙で、実に小気味良い。特に、最後の「オチ」の切れ味は絶品で、読者としても最高潮の気分のまま読み終えられるという点も素晴らしい。
 ただ、テニスの試合自体をきっちり描いているのは実は二試合だけで、最終戦が妙にあっさり終わってしまう辺りは、ちょっと拍子抜けするのも確かである。全体的に、終盤から急に新設定が登場して駆け足で物語が展開している感は否めないので、もう一巻くらいかけて描いてくれた方が良かったのかもしれない。
 とはいえ、近年のテニス少女漫画の中では(『しゃにむにGO』を別格とすれば)一番の傑作と言っても良い内容だと私は思う。作風(デフォルメの形式など)は「いかにも最近の少女漫画」といったカンジだが、昔風の絵柄が好きな私でも普通に楽しめたので、その意味では、世代を問わず多くの人々にお勧め出来る作品と言えよう。