大本鶏『Age!』

Age エイジ 【コミックセット】

連載：『月刊少年マガジン増刊グレート』（1996〜1998年）
単行本：講談社マガジンコミックス（1997〜1998年）　全4巻

　月マガの増刊号にあたる隔月誌『グレート』にて連載されたテニス漫画。作者の大本鶏は本作品の前に『姫太郎』『PINKISH』（共にマガジンコミックス）を発表していたが、本作以後は（少なくとも「大本鶏」名義では）単行本は発売されていない。誰か、近況について知ってる人がいたら教えて下さい。
　ひたすら短気な高校一年のテニス少年・高野エイジを主人公として、彼が中学時代に敗れたテニスエリート・黒崎との再戦を目指して奮戦する、という物語。当初はひたすらフラットのみに頼っていたエイジが、先輩やライバル達との試合を通じてテニス選手としての幅を広げて、人間的にも成長していく、というのがストーリーの軸となる。
　個人的な見解としては、この作品の最大の見どころは、エイジの師匠となる岩波小太郎の存在である。正直言って、序盤の展開はやや単調で、一巻の時点では今一つ話が盛り上がらなかったのだが、二巻で彼が登場して以降、徐々に物語のテンポも軽快になり、全体的なテンションも上がっていく。特に、彼が語る「テニスをする上で一番大切だと感じているもの」に関するエピソードは、他のテニス漫画にはない本作品独自の視点で、なかなか興味深い。
　テニス描写に関しては、試合の場面ではオーソドックスな作風が強いが（三巻の最後でやや魔球めいた必殺技が登場するが）、練習風景では古典的なスポ根風味のトンデモ方法もあり、それはそれで面白い。ただ、全体的にちょっと中途半端かな、という気がしなくもない。主人公の性格が破天荒なだけに、もう少しぶっ飛んだ演出があった方が良かったような気もする。
　全体的に「悪くない」とは思うのだが、それ以上でも以下でもない、というのが正直な感想である。やっぱり、華のあるキャラが小太郎くらいしかいないのが難点かな（大阪の二人も結構好きだけどね）。せめてヒロイン（？）の佐野妹がもう少し物語の本筋に絡む展開があれば良かったのに、と思う。あと、彼女の「素顔」がまともに描かれたのが一回だけというのも勿体なかったね。