瀬尾公治『W's(ダブルス)』

W’s 1 (少年マガジンコミックス)

W’s 1 (少年マガジンコミックス)

連載:『マガジンスペシャル』(2000年〜2001年)
   講談社マガジンコミックス(2000年〜2001年) 全3巻


 『GIANT STEP』の一年前にマガジンスペシャルで連載されていたテニス漫画。作者の瀬尾公治は本作が初連載作品であり、この後、『CROSS OVER』で週マガに進出。現在は、それに続く『涼風』の大ヒットにより、同誌の看板作家の一人にまで成長した。
 主人公は、かつてウィンブルドンでも活躍した名選手・沖田修二(故人)を父に持つ小学三年生の沖田剣(つるぎ)。亡き父の姿をビデオでしか知らない彼が、銭湯で出会った六年生の少女・真田霞との出会いを契機にテニスの世界に足を踏み入れ、父の残した因縁と戦いながら「自分のテニス」を確立していく物語。
 小学生を主人公としたテニス漫画は数が少ないが、本作品であえて小学生を題材とした最大の理由は、おそらく、「小3の少年が26歳の美人母に連れられて女湯に入り、そこで小6のヒロインと遭遇して気まずい雰囲気になる」という物語冒頭のシチュエーションを描くためであろう。『涼風』の第一話を見た時、「この人、昔と何も変わってないな」と妙に納得したのは私だけではないと思う(そして、この人が本当に描きたかったのは、本編よりも第2巻に掲載された「番外編」なのではないかとも思う)。
 とはいえ、決して「そういう場面」だけで終わる作品ではなく、「スポーツ漫画」としても十分に楽しめる内容である。テニス描写に関しては、主人公が小学生だけに、基礎から忠実に読者にも教える形でテニスの面白さが描かれており、プレイスタイルの説明なども分かりやすい。また「世界で2番目に強い人」のエピソードも、なかなか面白いと私は思う。
 『GIANT STEP』同様、この作品も主要キャラ達が(大人/子供問わず)魅力的で、「もう少し読みたい」と思わせる内容なのだが、残念ながら(タイトルに反して、ダブルスの試合を一度も描かぬまま)僅か3巻で終了。ただ、物語の主要なテーマ自体はきっちり描き切っているので、決して読後に消化不良感はない。でもやっぱり、いずれ(一話限りの読み切りでもいいので)彼等の成長した姿も見てみたい、と願うのは、ファンのわがままであろうか。