里見桂『0の男(ラブ・ボーイ)』
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単行本:小学館少年ビッグコミックス(1986〜1987年) 全3巻
小学館の『少年ビッグコミック』(旧称:『マンガくん』)が『ヤングサンデー』にリニューアルする直前期に連載されていた作品。作者の里見桂(さとみ・けい)は1980年代には週サンの『なんか妖怪?』『スマイルfor美衣』などで活躍し、現在は『ZERO -THE MAN OF THE CREATION- 』を『スーパージャンプ』にて連載中。
駆け出しのプロテニス選手である主人公・日向零(ヒュウガ・レイ)が、家族と恋人を次々と殺された後、幼馴染みの父から謎のファイルを託される、というところから物語は始まる。家族と恋人を殺されたことへの復讐のため、零はテニス選手として世界中を転戦しつつ、そのファイルを狙う謎の組織との戦いに身を投じていく、という物語。
一応、作中ではテニスの場面も描かれてはいるものの、物語の本筋はあくまで謎の国際組織との戦いである。ただ、その過程でラケットを使って人を殺したりもしているので、ある意味で「格闘テニス漫画」の極端な類型と位置付けることも出来るかもしれない(ちなみに、連載期間は『燃えるV』とほぼ同時期である)。
とはいえ、本質的には本作品はやはりテニス漫画ではなく、あくまでサスペンス漫画である。身内を殺した者達の情報を集めるために様々な人々と接触し、時にはそこでほのかな慕情・友情が生まれつつも、最終的には零と関わった人々の大半が命を落としていく、というハードボイルドな展開には、なかなか緊張感がある。
ただ、細かく見ると色々と物語的に無理がある(or説明不足な)展開も多く、特に最後の大ボスの正体に関してはあまりに突飛な設定で、やや面喰らってしまう。ただ、そもそもテニスとサスペンスを組み合わせるというコンセプト自体が突飛なので、これくらいの飛躍した物語の方が、全体的な作風にも合っているのかもしれない。
現在でも古本屋などで購入は出来るものの、「少年ビッグコミックス」レーベル自体が既に消滅しているため、ブックオフなどでも配置場所が分かりにくい、なので、探すならヤフオクの方が楽かもしれない。