松崎晴臣『青春タイブレーク!』

青春タイブレーク 1 (少年キャプテンコミックス)

青春タイブレーク 1 (少年キャプテンコミックス)

連載:『増刊少年サンデー』(1989〜1990年)
単行本:徳間書店キャプテンコミックス(1993年) 全3巻


 1986年に『FLY OF 翔』で第31回手塚賞で佳作を獲得した松崎晴臣(はるみ)の描いたテニス漫画。連載誌は増刊サンデーだったが、小学館では単行本化されず、なぜか連載終了から3年後に徳間書店のキャプテンコミックスとして全三巻で発売された。なお、本作品以外での作者の活動については全く不明。
 スポーツ万能の小学六年生である主人公・榎本尊(えのもと・たける)が、米軍基地で天才テニス少年ロッド・グリーンフィールドとの出会いをきっかけに、彼に勝利することを目指して日本チャンピオンの津田秋緒(あきお)に弟子入りする、という物語。第1巻の最後で彼は14歳へと成長し、第3巻では全米ジュニアでのロッドとの対決、およびその後のエピソードが描かれる訳だが、作者のあとがきによると、どうもその後日談は単行本発売時に書き足したものらしい(第3巻の約半分は書き下ろし、と書かれていた)。
 全体的に『フィフティーン・ラブ』などに近い系統の(タイトル通りの)「テニスを通じての少年達の青春」を描いた作風であり、テンポもよく、キャラの位置付けも明確で、非常に読みやすい。登場人物数も多すぎず少なすぎず、全3巻の頁数の中で適度に各キャラの個性が描かれており、バランス構成も良い(個人的には簑田や菜々子・桃子の試合も見てみたかったが、連載期間の関係上、さすがにそれは無理だったのだろう)。
 テニスの練習/試合に関しては、主人公が素人の時点から物語が始まるため、かなり基本に忠実なオーソドックスな作風で描かれており、特に魔球も必殺技も出てこないが、それでいて各選手の個性は見事に表現されており、読者を退屈させない。
 絵的には今見ると古く感じるかもしれないが、個人的にはこの人の絵柄は結構好みだったりする(それだけに、現在の消息が不明なのが非常に残念)。徳間の単行本なので現在ではやや入手は困難かもしれないが、オークションなどではたまに見かけるので、さわやか系のスポーツ漫画が好きな人々には、強く購入をお勧めする。短いながらも非常によくまとまった、質の高いテニス漫画である。