小谷憲一『Doubles』

連載:『月刊少年ジャンプ』(1991〜1992年)
単行本:集英社ジャンプコミックス(1992年) 全2巻


 『テニスボーイ』の小谷憲一月ジャンで描いたもう一つのテニス漫画。作者は同時期に『スーパージャンプ』で『17ans』の連載を始めており、これ以降は実質的に青年誌を主戦場とするようになる。
 超高校級投手である主人公・片桐塁が、審判への暴行によって退場&退学処分となった後、偶然出会った女子ジュニアテニス界の有望選手・森尾由衣と共に、バイク事故で命を落とすところから物語は始まる。天国への水先案内人の一存で、彼の出す「三つの条件」を満たすことを条件に再生を許された彼等は、その三つの条件の一つである「ウィンブルドン優勝」を目指して、やがて二人でダブルスを組むことになる。
 「野球からの転向」というのは、『テニスボーイ』を初めとしてテニス漫画ではよくあるパターンだが、投手出身というのは意外に珍しい(一応、逆パターンとしては『おはようKジロー』の沢村がいるが、彼もすぐに外野にコンバートされる)。
 また、混合ダブルスが主体という意味でも『テニスボーイ』との共通点が多いように思えるが、実際にはかなり雰囲気が異なる。優等生だった飛鷹とは対照的に、塁はひたすら自己中心的で、なかなか真面目にテニスに打ち込もうとせず、読者もそんな彼の姿勢に共感出来なかったせいか、本格的なテニス漫画へと発展する前に、いきなりの急展開で僅か二巻で終わってしまう。おそらく、打ち切りであろう。
 実際、私としても本作品の物語構成に関しては今一つ納得出来ず、結果的に『テニスボーイ』における寺島優の偉大さを痛感させられた。ただ、一方でテニス描写自体は本作品においても非常に秀逸で、躍動感ある丁寧なフォームの描き方などは決して衰えてはいない。それだけに、その画力に見合っただけの物語となる前に終わってしまったことが非常に残念なのである。
 『テニスボーイ』のファンとしてはどうしても厳しい意見になってしまうのだが、それでも(おそらくは急造の展開なのであろうが)最終回にはそれなりに感じ入るところもあったので、あくまで『テニスボーイ』とは別物と割り切って読めば、それなりに楽しめる作品なのかもしれない。