石田豊(原作)/里見桂(漫画)『ハニーハンター』

連載:『週刊少年サンデー増刊号』(1979〜1980年)
単行本:朝日ソノラマ サンコミックス(1981年) 全2巻


 『0の男』の里見桂の初期の連載作品。おそらく、『よろしく春平』の前に増刊号で連載していた作品と思われる(ただし、明確なソースは現在私の手元にはない)。原作者の石田豊は、他に『シューター』(漫画:伊賀和洋)、『PCガールズ』(漫画:山本修司)などの漫画本でも「原作」としてクレジットされているが、現在の活動などの詳細は不明。
 主人公は、プロテニス選手として世界中を転戦しつつ、秘密諜報員として様々な国際陰謀を探る、伊達兵吉(ひょうきち)とマーガレット夏木(通称:マギー)の混合ダブルス・ペア。軽薄な兵吉とクールなマギーが、テニス選手としては「ノン・タイトル・プレイヤー」と言われつつも、その陰で一流のシークレット・サービスとして難事件を次々と解決していく過程が描かれる。兵吉の軟派なノリはその後の『よろしく春平』に、作品全体のコンセプトは『0の男』に受け継がれたと言って良かろう。
 デビュー直後の里見桂の画力は、キャラも背景も既に当時のサンデー内でも一線級と言って良い。ただ、コマ割や台詞の構成などに関してはやはりまだ慣れていなかったのか(あるいは、原作者との意思疎通が上手くいかなかったのか)、特に序盤はやや「読みにくさ」が感じられる(ただ、それも後半になるとかなり改善されている)。
 テニスの場面が描かれる頻度としては、『0の男』以上『よろしく春平』以下、といったところであろうか。一応、ローランギャロやフラッシングメドウの会場もそれなりに詳細に描かれてはいるものの、あくまでそれらの描写は「背景」にすぎず、テニスの試合そのものを描くことは本作品における主題ではない。ただ、断片的に「テニス」の要素を生かした面白い描写が随所に見られることも確かである。
 かなり古い作品なので、今の感覚で読むと色々と違和感も感じるが、むしろ「歴史漫画」として読めば結構楽しめる内容だと私は思う。惜しむらくは、サンコミックス朝日ソノラマ)故に、まず普通の古本屋には売っていない、ということか。