吉住渉『ママレードボーイ』

ママレード・ボーイ 2 (りぼんマスコットコミックス)

ママレード・ボーイ 2 (りぼんマスコットコミックス)

連載:『りぼん』(1992〜1995年)
単行本:集英社りぼんマスコットコミックス(1992〜1996年) 全8巻
    集英社ガールズコミックス(2004年) 全6巻


 1994年にアニメ化され、後に台湾でもドラマ化された吉住渉(よしずみ・わたる)の大ヒット作品(影山由美による小説版も存在)。作者には他に代表作として、OVA化された『ハンサムな彼女』や、同じくテニス部の少女を主人公とする『ウルトラマニアック』(2003年アニメ化)などがある。近年は『りぼん』に加えて、同じ集英社の『コーラス』でも活動中。
 主人公は、高校一年生のテニス部員・小石川光希(みき)。互いの両親がスワッピング再婚したことで同じ家に暮らすことになった同じ高一の松浦遊(ゆう)と、同級生で同じテニス部の須王銀太、そして親友の秋月茗子(めいこ)、といった面々との間での複雑な恋物語が繰り広げられる。
 本編において本格的にテニスの試合が描かれるのは第2巻である(故に上記の画像も第2巻)。作者自身がテニス経験者ということもあり、恋愛メインの少女漫画の割にはきっちりと描かれており、巻末には初心者向けの「テニス講座」コーナーもある。他にも断片的にテニスの場面は幾度か登場するが、基本的にはあくまで「恋愛漫画」であり、テニスはその中での一つの題材に過ぎない。
 そして、そのメインである「恋愛」の結末であるが、実は作者は当初は全く異なる展開を用意していたらしく、そこから軌道修正を施した結果、当初の予定よりも更に深みのあるラストを迎えることが出来たと言える。ちなみに、アニメ版でもラストはほぼ同じ結末であったのだが(この時、最終回が掲載された『りぼん』の発売時期とアニメの最終回の放映時期をほぼ同時になるように調整したらしい)、この最後の「種明かし」の部分の事情説明がアニメ版では殆どすっ飛ばされてしまったので、やや分かりにくい。故に、アニメ版を見て今一つ納得がいかなかった人は、今からでも原作を読んでみるのが良かろう。
 上記の通り、本作品は厳密な意味での「テニス漫画」ではないが、少なくとも恋愛漫画としては傑作中の傑作であると私は思うので、まだ未読の人はぜひ、この機会に手にとってみることをお勧めする。