高杉菜穂子『スマイルアゲイン』

連載:『なかよし』(1990年)
単行本:講談社コミックスなかよし(1990〜1991年) 全2巻


 1980年代に『なかよし』を中心として活躍した高杉菜穂子の描いたテニス漫画。作者の他の代表作としては、『指輪物語』(同名の海外小説とは無関係)、『ギンガム☆AGE』などがあるが、本作品以降の活動は不明。
 中学生になったばかりの主人公・工藤みずきが、入学式の日に出会った男子テニス部の部長・中西優也に一目惚れし、同級生の大古瀬和美に誘われたこともあって、女子テニス部への入部を決意する、というところから物語は始まる。みずきと中西、そして女子テニス部の部長である篠崎章子(しょうこ)と、同級生でバスケ部員の関谷敏樹、といった面々との間で繰り広げられる、中学生らしいほのかな恋愛模様が全2巻(実質的には約1.5巻)の物語を通じて描かれる。
 テニス部が主要な物語の舞台ではあるものの、実は全編通じてテニスの試合が描かれる場面は一度もない。前半の物語の主軸は、入部したばかりでラケットも握らせてもらえない一年生達と上級生との対立にあり、その過程においても(普通のテニス漫画でよく用いられるような)「どちらの意見を採用するか、試合で勝負!」などといった展開にはならず、現実的な形での解決策が模索されており、実にリアルな「中学生の部活動」が描かれている。その意味で、まさに本作品は(特に前半は)典型的な「テニス部漫画」と言えるであろう。
 余談であるが、あゆみゆいは本作品の数年後に描いた『太陽にスマッシュ!』の巻中で「過去のなかよしにテニス漫画はなかった筈」と語っており、少なくとも彼女の中では本作品は「テニス漫画」には数えられていないらしい。まぁ、実際のところ私も、本作品はあくまで「スポーツ漫画」ではなく「部活漫画」だと思うので、別にその認識も間違いではないと思う(特に後半に入ると、テニス部の場面すら少なくなる)。
 そんな訳で、テニス漫画として読むと物足りなさを感じることにはなるだろうが、テニス部漫画としてはそれなりに面白い内容だと私は思う。まぁ、私がそう思ったのは、篠崎部長も和美もどちらも私の萌えツボだったから、という理由故なのかもしれないが。