なかじ有希『ビーナスは片想い』

連載:『LaLa』(1999〜2005年)
単行本:白泉社花とゆめコミックス(1999〜2005年) 全12巻


 『小山荘のきらわれ者』『ハッスルで行こう』などで有名な、白泉社『LaLa』の人気作家・なかじ有希の代表作の一つ(単行本巻数では、現在のところ最長)。現在は同誌にて『ZIG☆ZAG』を連載中。
 主人公は、神戸の甲東大学の新一年生・芦原紗菜(あしはら・すずな)。入試時に知り合った付属高校出身の梶陽奈子(かじ・ひなこ)と、その友人である魚住英知(えいち)&深見慎哉と共にテニス・サークルに入会し、恋に溢れた華やかなキャンパス・ライフを満喫する、という物語。最終的には彼女達が卒業する直前(&直後)までが描かれる。
 本作品の最大の魅力は、「いかにも白泉社!」と言わんばかりの、さわやかな美男美女達が繰り広げる恋愛劇(含・同性愛)である。上記の四名に加えて、途中から次々と登場する魅力的なキャラ達が、まったり&ほのぼの(&微妙に倒錯)した雰囲気の中で少しずつ自分の「恋」を成就させていく過程が丁寧に描かれている。
 それぞれの登場人物がそれぞれに異なるタイプの魅力の持ち主なので、様々な読者のニーズに対応した作風と言えよう(ただ、一部のキャラは途中から極端に出番が減ってしまうが……)。ちなみに、私の一番お気に入りは、第8巻から登場する某嬢である。だからこそ、最終巻収録の「番外編」には本当に感動させられた。
 まぁ、テニス漫画としては、正直言って評価出来る部分はあまりない。一応、彼女等の所属するテニス・サークルは付属高校のテニス部出身者が多く(特に深見はインターハイ経験者)、それなりに本格的なサークルだった筈なのだが、本編中ではテニスはあくまで「大学生活内の日常」として描かれる程度で、それ自体が物語に大きく左右する訳ではない(そして、後半に入るとそのような場面自体が減っていく)。
 とはいえ、私自身、本作品を読んで「あぁ、学部生時代に戻りたいなぁ……」と思わされてしまったことも確かなので、おそらく「華やかな恋愛漫画」が好きな人なら、間違いなく楽しめる作品であろう。ただ、「バカップルがイチャつく話なんて、何が面白い?」と思う人は、やめておいた方がいいかな。