磯貝亮一(原作)/安住だいち(作画)『RISE』

連載:テニスジャーナル(2009〜2010年)
単行本:未発売


 テニス専門誌『テニスジャーナル』にて連載されると同時に、スポーツ漫画専門のwebコミック配信サイトSPOMAでも配信されたテニス漫画。作画担当の安住だいちは、本作品以前にスカッシュを題材とした『マスカッシュ』という作品をSPOMAで掲載しており、昨今は『Fellows』にてカンボジアを題材とした作品を描いている(原作者の磯貝亮一については詳細不明)。
 主人公は、有明国際大学の2年生・湯川祐太。彼を含めた同大学のテニス部員達の前に、テニスコートのネットにくるまって眠っていた謎の人物・桜庭和也が現れる場面から物語は始まる。優れた脚力を持ちながらも実力を発揮しきれずに伸び悩んでいた湯川を初めとする同部のメンバー達が、昨年度のインカレ出場校・竹芝大学テニス部との練習試合において、桜庭から助言を受けたことを契機として、少しずつ成長していく過程が描かれる。
 テニス専門誌であるが故に、その描写は非常にリアルかつ実践的であり、ケレン味は全く存在しない。また、実在のプロ選手・鈴木貴男を登場させたり、ラケット選びなどでもこだわりを見せる辺りからも「実際にテニスをプレイしている人々のための漫画」として描かれていることが伺える。テニス漫画界では非常に珍しい「大学テニス」を題材として選んだのも、おそらく読者層が自分とオーバーラップさせやすいと考えたが故であろう。
 ただ、さすがに漫画専門誌ではないため頁数も少なく、しかも雑誌のリニューアルに伴って僅か13回で打ち切られてしまったため、本格テニス漫画としての本領を発揮する前に幕を閉じてしまったのが残念でならない(そして『テニスジャーナル』自体も、リニューアル直後に休刊してしまう)。
 ちなみに、祐太は物語の途中でライジングを習得することになるのだが、「ユータのライジング」と聞くと、どうしても別の作品を連想してしまう。多分、ただの偶然だとは思うのだけどね。