森真理『ラジカル庭球団』
- 作者: 森真理
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1988/03
- メディア: 新書
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単行本:小学館サンデーコミックス(1988年) 全1巻
『なんとなくブーリン』や『ツッパリたいの』などの異色作をサンデーで連載したことで知られる森真理の初期の短期連載作品。作者は現在は『ビッグコミック』にて『銀のしっぽ』を連載中。
私立勝生(かつお)学園の一年生にして、茶道の名門の家元の息子である主人公・茶所広之(ちゃどころ・ひろゆき)が、なぜか武道の達人揃いの女子テニス部の副将・真田美舞(みまい)に助けられたことを契機に、彼女の力になるためマネージャーとしての入部を決意する、という物語。
まず最初にことわっておくが、この漫画はテニス漫画ではない。一応、「テニス部漫画」ではあるものの、本編中でまともにテニスをする場面は一度もなく、ただひたすら、美舞を初めとする女子テニス部の面々と茶所が様々なトラブル(主に理事長による陰謀)に巻き込まれつつも、それらを力づくで解決していく、という学園コメディである。
ドタバタしつつも、どこかまったり感の漂う独特な作風なので、人によってかなり評価は分かれるとは思うが、個人的には結構好き。ひたすら短気で横暴で野獣な美舞と、そんな彼女に献身的に尽くそうとする茶所、そして天然気味の主将・谷口エミや、No.3で美舞のライバルである九条涼美(くじょう・すずみ)など、それぞれのキャラクターが極端な性格のため、物語としても非常に分かりやすい。
私としては、幹部の中では一番の常識人っぽい隻眼のNo.4・白川結(ゆい)がお気に入りだったので、彼女の見せ場が少なかったのが残念なところではあるが、陰が薄いなりに微妙に物語の展開に貢献しているという点も、それはそれでまた良い。
単行本一巻で終わってしまったのが非常に惜しい、テニス漫画の裏歴史に残る名作だと私は思う。今となっては再版される可能性はまずないだろうから、興味を持ってくれた人はなんとか古本屋などを巡って探し出して欲しい。