桐島いつみ『栄光まっしぐら』

栄光まっしぐら (きらら16コミックス)

栄光まっしぐら (きらら16コミックス)

連載:『きらら16』(?年)
単行本:秋田書店きらら16コミックス(1998年) 全1巻


 今は亡き秋田書店の漫画雑誌『きらら16(セーズ)』にて連載されていたと思われる桐島いつみの作品(ただし、単行本に初出表示がないため、連載時期は不明。情報求む)。作者には他に『私は主人公』『まっかな人間像』(共に集英社ぶ〜け』)などの作品がある。近年は、朝日ソノラマ芳文社などで執筆中。
 主人公は、ぎらら高校のテニス部員である一年生の神田伸子(表紙絵の左下の少女)。テニス選手としての栄光を掴むことを目指してまっしぐらに努力する彼女の姿を描くという名目で、実質的には同学年の河原崎光子(表紙中央の少女)の活躍(?)や、彼女の母親である河原崎松子による「(自称)ウィンブルドン式テニス指導」を描きつつ、その中で主人公として全く正当に扱われない哀れな神田の不遇な姿を描く、という作品。要するに、スポ根をダシにしたコメディである。
 ギャグ漫画を文字で解説するのは実に野暮なのだが、とにかくこの作者のセンスは素晴らしい。笑いのツボは人それぞれだとは思うが、少なくとも私はかなりヒットした。その中でも特に、第四話の「UFOだ」は(流れ上、前の頁の時点で予想出来たオチではあるが)まさに白眉である。あくまでも(かなり無理はあるものの)「テニス」という競技の枠内での「笑い」を求めるその姿勢は、スポーツ系コメディとしてまさに王道である(笑いのセンスはかなり邪道だが)。
 現在は『きらら16』自体が廃刊となってしまったため、単行本もおそらく絶版であり、なかなか入手が困難になってしまった作品ではあるが、オークションなどで稀に出品されることもあるので、気長に探してみるのが良かろう。ちなみに、この単行本全体の中で本作品が占める割合は六割程度であり、残りの頁には「不幸まるだし」「眠れないワタシ」「見るさる聞くさる」「お嫁ジルバ」「泣きっつらに恥」という五本の短編が収録されている(個人的には、これらもなかなかお勧めである)。