鬼城寺健『呪われたテニスクラブ』

呪われたテニスクラブ (学園恐怖)

呪われたテニスクラブ (学園恐怖)

初出:不明(単行本書き下ろし?)
単行本:立風書房レモンコミックス(1985年) 全1巻


 ホラーコミックの有名レーベルの一つ、立風社の「レモンコミックス」から発売された作品。作者の鬼城寺健(おにじょうじ・けん)は本作品の他に同じレモンコミックスから五冊の単行本を出版している一方、トップ社や東考社のホラー漫画では「月宮美兎(よしと)」の名義を用いており、更に成年漫画では「鬼多川一平 」、戦記漫画では「ドン男爵」の名で活動する、非常に作風の広い漫画家(劇画家)である。
 物語は、双葉小学校の六年生のテニス部員七人が、東都大学テニス部の男子部員達と共に山花高原のペンションへと合宿に向かうところから始まる。しかし、実はその合宿所の近辺には、平家の落人の死霊が住み着いていると言われており、やがて彼女達は様々な怪奇現象に遭遇し、やがて一人、また一人と姿を消していくことになる。
 まず最初にことわっておくが、私はホラー漫画を読んだ経験が殆どないため、本作品に関しては正当なレビューを書ける自信はない。その上で、非常に独特の画風の人だなぁ、というのが第一印象であった。いわゆる「劇画調」なのだが、通常の人物の描き方、デッサンの取り方にかなりクセがあり、最初は少々読みにくかったのだが、物語の「真の主役」とも言うべき怪物達が姿を現し、それと遭遇した人々の肉片が飛び散っていく場面になると、「あぁ、なるほど。こういう怪奇描写のためには、こういった人物の描き方が必要なのか」と妙に納得させられた。特に、物語の終盤における典子(主人公の一人で、超能力者)と死霊との戦いの描写はなかなか見ごたえがある。
 テニス描写に関しては、途中で練習風景が若干描かれるのみであり、「テニス」そのものが「ホラー」を造り出している訳ではない。あくまで、死霊や怪物とのギャップを際立たせるための題材として「テニス合宿」というさわやかな舞台が設定された、と考えるべきであろう。
 前述の通り、ホラー漫画については殆ど読んだこともないので、どこまで評価すべき作品なのかは分からないが、とりあえず、素人の私が読んでもそれなりに楽しめた作品ではあった、とだけ述べておくことにしよう。