竹原亜美『一番星み〜つけた!』

一番星み~つけた (講談社コミックスフレンド)

一番星み~つけた (講談社コミックスフレンド)

連載:『週刊少女フレンド』(1985年)
単行本:講談社KCフレンド(1986年) 全1巻


 『エンゲージブルース』『ラブバラッド』『思いっきり恋』などの講談社刊の単行本を残した竹原亜美が、『週刊少女フレンド』にて短期連載した作品。なお、この単行本には、同時収録として「“好きです”to You」が掲載されている。
 中学三年生の主人公・都築美弥子が、従兄の草介、親友のかおる、その恋人の竜二の三人と共に山中湖を訪れた際、テニスの練習をしていた美少年・岡田文瀬(あやせ)と出会うところから物語は始まる。美弥子は彼と同じ高校に通うため、猛勉強を重ねて名門・郁島高校への入学を果たすのだが、そこで彼女は文瀬の双子の兄・早瀬(はやせ)と遭遇することになる。王子様系の文瀬と、不良タイプの早瀬、そして彼女を長年見守り続けてきた草介の三人と美弥子の複雑な関係が、彼女の過去の記憶と絡み合いながら繊細に描かれている。
 物語の中では、草介と文瀬がテニス部員であり、美弥子も入学後に同じテニス部に入部することになるのだが、全編通してテニスの場面は殆ど無く、あくまで背景設定として(文瀬と早瀬の区別のための一つの指標として)描かれているにすぎない。その意味では、あまりテニス漫画と呼べる内容ではないが、普通に恋愛漫画として読めば、それなりに面白い。
 ただ、コマ割の仕方などにややクセがあり、少々読みにくい感もある(まぁ、それほど気になる程でもないが)。また、それぞれのキャラごとに凝った「過去」が設定されており、それに基づいた物語構造全体は面白いのだが、やや詰め込み過ぎ(特に、終盤の説明が拙速すぎ)という印象も受ける。せめてあと1〜2話あれば、もう少しきっちりと描けたような気もするので、その点は少々残念なところである。
 とはいえ、作品全体の評価としては、よくまとまった少女漫画だと思う。マイルド系とワイルド系の兄弟(特に双子)というのは使い古された設定ではあるが、弟の方がマイルド系というのは、意外に珍しいかもしれない。まぁ、どっちにしても、恋の勝敗は大抵同じ結果になるんだけどね。